新社会人の皆さんへ(読了目安時間:6分)

──何を学ぶべきか迷ったら、まず良書を読んでほしい

先週27日の金曜日、会食に向かうためタクシーに乗りました。私は普段、タクシーのドライバーさんとあまり会話をする方ではありません。しかし、その日は珍しく自然に言葉を交わす流れになりました。
そのドライバーさんは愛媛県今治市の出身で、「お金を稼ぎたくて上京したんです」と話してくれました。最初は、私が向かう会食のお店の話や、ドライバーさんのおじいさんがキス釣りの名人だったという話など、取りとめのない雑談でした。けれど、不思議と会話は弾み、目的地が近づくにつれて、少しずつ本題に近づいていきました。
そして彼は、こう言いました。
「今、私は29歳です。何を勉強したら良いと思いますか?」
私はとても良い質問だと思いました。
ただの世間話ではなく、自分の人生を少しでも前に進めたい、何かをつかみたいという気持ちが、その一言ににじんでいたからです。
私はこう答えました。
「最近の10代、20代の方は読書離れが進んでいるとも聞きますが、まずはビジネス書の古典を読んでみたらどうでしょう。例えば、デール・カーネギーや松下幸之助の本です。単行本ならせいぜい二千円くらいでしょう。でも、本によっては、著者が何年、何十年もかけて得た人生のエッセンスが一冊にまとめられている。良書を買うほど、効率の良い投資はないと思います
すると彼はすぐに、「この車を停めたら、早速買ってみます」と返してくれました。
私は思わず、「1カ月に1冊読む習慣が身につけば、すごく成長できると思うから、やってみてください。頑張ってね」と続けました。
ほんの短いやり取りでしたが、私は強く印象に残りました。

人は、年齢で伸びるのではありません。学ぼうとする人が伸びるのです。逆に言えば、若くても学ぶことをやめた瞬間から、成長は止まります。
私はこの話を、新社会人の皆さんにもそのまま贈りたいと思います。
4月。新しい職場に入り、新しい人間関係の中に飛び込み、緊張しながら毎日を過ごしている方も多いでしょう。学生時代とは違い、社会に出れば結果を求められます。仕事のスピード、正確さ、報連相、気配り、周囲との関係づくり。覚えることは山ほどあります。自分は何を学べばよいのか、何を身につければ将来につながるのか、見えにくくなるのも当然です。
そんなとき、多くの人は資格や流行りのノウハウに目を向けます。もちろんそれも否定はしません。しかし、若いうちにまず身につけてほしいのは、もっと土台になるものです。
人とどう接するか。
信頼をどう築くか。
逆境にどう向き合うか。
仕事を通じてどう自分を鍛えるか。
そして、どう生きるか。

こうした本質は、時代が変わってもそう簡単には変わりません。だからこそ、古典には価値があるのです。
デール・カーネギーの本には、人間関係の基本が平易な言葉で書かれています。松下幸之助の本には、経営者としてだけではなく、一人の人間としてどうあるべきかの示唆が詰まっています。長く読み継がれてきた本には、それだけの理由があります。古い本だから古いのではない。時代を超えて残るだけの普遍性があるから、今でも読まれているのです。

私は、若い頃に読む本は、その後の人生の思考の土台になると思っています。特に社会に出たばかりの時期は、目の前の仕事に追われる一方で、自分の軸がまだ固まっていません。だからこそ、良い本に触れる意味がある。自分よりはるかに多くの経験を積んだ人の知恵を、数千円で学べる。これほど費用対効果の高い自己投資は、そうありません。

私はこれまで何度も書いてきましたが、若いうちに大切なのは、最初から大きな成果を出すことではありません。まずは信頼される人になることです。言われたことをきちんとやる。分からないことを放置しない。ミスをごまかさない。挨拶をする。約束を守る。人の話をきちんと聞く。当たり前のことですが、この当たり前を続けられる人は意外に少ない。そして、長く活躍する人ほど、この土台がしっかりしています。

そのうえで、読書にはもう一つ意味があります。
それは、会社の中だけで通用する人間で終わらないためです。
若いうちは、どうしても目の前の上司や社内評価が気になります。しかし、本当に大切なのは、その会社の中だけで評価される人材になることではなく、社会の中で必要とされる人になることです。そのためには、日々の仕事を真面目にやるだけでなく、自分の頭で考える力を養わなければならない。読書は、そのための最も手軽で、しかも強力な方法の一つです。

最初から何もかもできる必要はありません。焦る必要もありません。けれど、何を学ぶべきか迷ったら、まず良書を読んでみてください。そして、できれば1カ月に1冊でもよいので、読み続けてください。その習慣は、すぐに見える成果にならなくても、数年後に必ず大きな差になります。
数千円の本が、何年分もの遠回りを防いでくれることがあります。
良書を買うほど、安い投資はありません。
この春、社会に出る皆さんが、自分なりの学びを積み重ね、会社の中だけでなく、社会の中で必要とされる人へと成長していくことを、心から願っています。

過去コラム:
新社会人の皆さんへ_2024:変化する世界で自己を磨き続けるために – kozuka.blog
新社会人の皆さんへ_2024 続編- – kozuka.blog
新社会人の皆さんへ_2025 – kozuka.blog
「“できない自分”を責めないで」– 新社会人の皆さんへ_2025 続編– – kozuka.blog

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