今回のテーマは、スタートアップ経営者や中小企業経営者、あるいはこれから資金調達を考えている方向けの、少々生々しい話です。
経営にご興味のない方は、今回はどうぞ読み飛ばしてください(笑)。
2011年に大ヒットしたドラマ『JIN -仁-』をご覧になった方も多いと思いますが、私は当時観る機会がなく、最近Netflixで初めて観ました。
現代の医師が幕末1860年代にタイムスリップし、多くの命を救う物語ですが、その中で、経営者として実に耳が痛い、しかし本質を突いた言葉がありました。
「あなたの器がどれほどのものか、見せていただきたい」
資金援助を検討する側の人物が発した言葉です。このセリフを聞いたとき、私は「これは昔の話ではない」と感じました。
むしろ現代の銀行融資、投資家の投資判断、資金調達の現場でも、まったく同じことが起きているからです。
会社経営をしていると、「どうすれば銀行からお金を借りられるか」「どうすれば投資家から出資を受けられるか」という話になります。
もちろん、事業計画は重要です。
売上予測も利益計画も必要です。
市場の成長性や競争優位性も説明しなければなりません。
しかし、それだけで大きなお金が動くほど、世の中は単純ではありません。
最も見られているのは、あなた自身なんです。
銀行は決算書を見ます。
投資家は事業計画を見ます。
もちろん、それらは重要です。
しかし、本当に見られているのは、その数字の向こうにいる“あなた”です。
なぜなら、お金を返すのも、事業を成長させるのも、最後は経営者自身だからです。
私は以前、金融の世界に身を置いていましたが、その頃に教わった言葉があります。
「案件を見るな。人を見ろ。融資審査はヒト、モノ、カネの順だ」
どれだけ立派な資料があっても、その経営者に信用がなければ意味がない。
逆に、多少数字が荒くても、「この人ならやり切る」と思わせる人物には、お金が集まる。
金融とは、そういう世界です。
英語で“信用”はCredit。クレジットカードのCreditと同じ言葉です。
つまり、お金とは信用の可視化なのです。
では、その信用とは何か。
私は、それを「器」だと思っています。
器とは何でしょうか。
肩書きでしょうか?
会社の規模でしょうか?
売上でしょうか?
違うと思います。
困難な局面で逃げないこと。
耳の痛い話に向き合えること。
約束を守ること。
感情で周囲を振り回さないこと。
人のせいにしないこと。
そして、自分より優秀な人を受け入れられること。
そうしたものの積み重ねが、その人の器になるのだと思います。
実は、私自身、自分という経営者がどの程度の信用力を持っているか、ある程度の感覚はあります。
無担保・無保証で、どの程度の資金調達ができるのか。
もちろん、具体的な金額を言うのは少々いやらしいので控えますが(笑)、経営をしていると、自分の市場価値のようなものはなんとなく見えてくるものです。
銀行がどこまで貸してくれるのか。
投資家がどこまで賭けてくれるのか。
それは会社の数字だけで決まるものではありません。
あなたという人間に、どれだけ信用があるか。
その現実が、ある程度数字として見えてくるのです。
そんなことを考えるようになったきっかけがあります。
昔、一緒に仕事をしたある経営者の存在です。
その方と仕事をしていて、私は正直に思いました。
「この人には勝てないな」
もちろん、売上や会社規模の話ではありません。
人を惹きつける力。
決断の胆力。
周囲に安心感を与える存在感。
そして何より、「この人なら何とかする」と思わせる圧倒的な信用力。
その経営者の周りには、不思議なくらい自然と人もお金も集まっていました。
その経営者はよく言っていました。「オレは、金集めは得意なんだ」
当時の私は、その姿を見て、「これが器というものか」と感じたものです。
もっとも、一緒に仕事をしていくうちに、自分も少しは近づけたのではないかと思う瞬間もありました。
とはいえ、今でも勝てるとは思っていません。
しかし、その経験から学んだことがあります。
経営者としての器とは、自分で語るものではなく、周囲が評価するものだということです。
結局、資金調達とは、お金を集めることではありません。
信用を集めることです。
そして信用とは、短期間では作れません。
日々の姿勢。
言葉。
約束。
行動。
そうした積み重ねの結果です。
もし、もっと大きな資金を調達したいと思うなら、考えるべきは資金調達のテクニックではありません。
「自分の器は、その金額に見合っているか」
この問いだと思います。
厳しい話に聞こえるかもしれません。
でも、希望もあります。
器は、生まれつき決まるものではありません。
経験で広がる。
失敗で深くなる。
努力で磨かれる。
だからこそ、経営者は面白いのです。
お金を追いかける経営者から、お金は逃げていく。
しかし、器を大きくし続ける経営者のもとには、結果としてお金が集まってくる。
私は、そう思っています。

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