台湾で感じた「品質」の本質(読了目安時間:5分)

先週、私は初めて台湾を訪問しました。
今回の目的は、私が代表を務める東京衡機エンジニアリングの主力製品「ゆるみ止めナット」の製造を委託しているA社を訪問し、初出荷に立ち会うことでした。
私は長い職歴の中で、欧州や米国、香港を中心としたアジアの国々を数多く訪問してきましたが、意外にも台湾を訪れるのは今回が初めてでした。
台湾といえば、世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCを思い浮かべる方も多いでしょう。
実際、台湾には半導体、電子部品、工作機械、精密機器、金属加工など、ハードウェア分野において世界的な競争力を持つ企業が数多く存在しています。
人口約2,300万人の島国でありながら、世界の製造業において極めて大きな存在感を示していることは驚くべきことです。

今回初めて台湾を訪問し、その理由の一端が分かった気がしました。
それは、「品質」とは製品だけではなく、人の行動や心配りにも表れるということです。
A社は自動車産業向け品質マネジメントシステムであるIATF16949認証を取得し、世界の自動車メーカーやタイヤメーカーに部品を供給しています。
IATF認証は単に良い製品を作れば取得できるものではありません。
品質を維持するための仕組み、人材育成、問題発生時の原因究明と再発防止、さらにはサプライチェーン全体にわたる品質管理が求められます。

※ IATF認証 : 自動車産業向けの品質マネジメントシステム規格である International Automotive Task Force が定めた「IATF 16949」認証

工場を見学すると、整理整頓された現場、徹底されたトレーサビリティ、作業手順の標準化など、高い品質レベルを維持するための仕組みが随所に見られました。
しかし、今回私が最も感心したのは工場設備や製品品質だけではありませんでした。
A社の社員の皆さんの「おもてなしの姿勢」でした。

空港への出迎えから工場訪問、会食、翌日の総経理とのミーティングまで、二人の女性社員が私たちの対応を担当してくれました。
会食の際には工場長と私たちの間に入り、料理や飲み物の注文を手際よく進めてくれました。
それだけではありません。
私は会食中、背中と椅子の背もたれの間に小さなポーチを挟んでいました。
すると、その女性社員は何も言わずに店員へ声を掛け、バッグを置くための籠を持って来てもらっていたのです。
私はその時まで、自分がバッグを不自然な場所に置いていることすら気付いていませんでした。
翌日の総経理とのミーティングでも同様でした。
私がスマートフォンで何かを調べようとしていただけで、まだ何もお願いしていないにもかかわらず、
「ゲストWi-Fiはこちらです」
と、IDとパスワードを教えてくれました。
ほんの小さなことかもしれません。
しかし、このような行動は相手をよく観察していなければできません。

そして何より、
「相手に快適に過ごしてもらいたい」
という気持ちがなければ生まれません。
私は長年営業の仕事にも携わってきました。
営業とは商品説明の技術ではありません。
相手が何を求めているかを理解し、相手が言葉にする前に動くことです。

今回の女性社員の対応は、まさにその本質を体現していました。
おそらくA社の強みは設備や技術力だけではないのでしょう。
相手の立場に立って考える企業文化が組織全体に浸透しているからこそ、高い品質が実現できるのだと思います。
品質という言葉を聞くと、多くの人は製品の精度や不良率を思い浮かべます。
もちろんそれも重要です。
しかし、本当の品質とは人の行動に表れるものではないでしょうか。
整理整頓された職場。
約束を守る姿勢。
相手への気遣い。
言われる前に動く習慣。
そうした日々の積み重ねが、最終的には製品品質や顧客満足へとつながっていきます。
今回の台湾出張では、IATF認証を取得している企業の品質管理を学ぶことができました。
しかし、それ以上に学んだのは、人への気配りや観察力こそが品質の原点であるということでした。
技術は真似できても、文化は簡単には真似できません。
だからこそ企業の競争力は最終的に「人」に行き着くのだと思います。

品質をつくるのも人。
信頼関係をつくるのも人。
そして未来をつくるのも人です。

私は今回の台湾訪問を通じて、そのことを改めて実感しました。
だからこそ、これからも「人を創る会社」を目指して歩み続けたいと思います。


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