お茶とスープはAIに運べない──“人の仕事”が輝くとき(読了目安時間 6分)

2025年6月、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOが社内向け書簡でこう述べました。
「生成AIやソフトウェアエージェントの導入により、今後数年間でアマゾンの社員数が減少する見通しだ。」
単なる効率化の話ではありません。大手テック企業のトップが、AI活用による“雇用削減”を正面から語った初めての例として、大きな注目を集めました。
現在アマゾンには約156万人の従業員がいますが、そのうち35万人が管理・事務系職種です。まさに「ホワイトカラーの本丸」が、AIによって再編の対象になるという現実が明らかになったのです。
また、同じくIT大手のマイクロソフトも、2025年に入ってからだけで9,000人(全体の4%)の削減を発表。その前にも約7,000人が対象となっており、背景には管理職の階層削減と、AIによる業務自動化の進展があるとされています。CEOのサティア・ナデラ氏によれば、すでに同社のコードの20〜30%がAIによって生成されているという事実も、今の状況を象徴しています。

「人がやる理由」が問われる時代へ
これらの動きが意味するのは、単なる人員削減ではありません。
「人を前提に設計された業務構造」が、世界的に見直されはじめているということです。
米国ではすでに、コンピューターサイエンス専攻やMBA卒の新卒ですら職に就けないケースが出てきています。もはや、「高度なスキルを持っている=安泰」という時代ではないのです。
では、AIに代われない仕事とは何か。
私は、過小評価されてきた仕事こそ、今後の時代にこそ価値を増すと考えています。

AIに代われない、“人の現場”とは?
たとえば、製造現場での手作業の微調整、建設現場での安全判断や即応力、厨房での調理のタイミングや盛り付け、そして飲食店でのお客様への接客──こうした仕事は、“パターン”だけでは成り立ちません。状況を読み、人の感情に触れ、即興で対応する力。これはAIが最も苦手とする領域です。
加えて、私はBtoB営業にも人間ならではの本質があると感じています。
営業とは、資料を届けることでも、単に説明することでもありません。相手の状況や空気を読み、組織の文化や背景に寄り添い、時間をかけて信頼を築いていく行動です。それは、定型処理とは真逆の“関係構築”の仕事です。

「お茶やスープを持ってくるのは誰か?」
身近な例で言えば、もし私が体調を崩したとして、AIは気の利いた慰めのメッセージくらいは送ってくれるかもしれません。
でも、お茶を淹れてくれたり、お粥やスープを持って部屋まで来てくれるのは、やっぱり“人”なんですよね。
この感覚こそが、AIでは置き換えられない領域の本質です。
効率化の先にある“意味”や“温度”を、私たちは決して手放してはいけません。

「AIに勝つ」ではなく「AIと共に価値を生む」へ
AIによって、業務はどんどん細分化・最適化されていきます。
でも、私たちが目指すべきは、「AIに奪われない仕事を探すこと」ではありません。
「人間にしか意味づけできない仕事を、自ら定義し、現場で体現すること」です。
企業にとっては、業務構造の再設計と、人材評価の見直しが求められます。
教育においても、「答えを知る力」より「問いを立てる力」「共に価値を創る力」こそが重要になります。

結び──人間にしかできない仕事は、確かに残る
これからの時代に残るのは、「何ができるか」ではなく、「なぜ、それを人間がやるのか」を語れる仕事です。
BtoB営業のように、信頼を積み重ねていく営み。建設現場や製造現場での即応的判断。飲食店やサービス業における顧客の言葉の裏にある“背景”を察する力。
そうした仕事が、これからの日本企業を支える核になるはずです。
AI時代は、働くことの“意味”を再定義する時代でもあります。
人間だからこそ担える役割を、自分の言葉で問い直す。
その問いを続けられる人が、これからの社会で本当に必要とされていく──私はそう信じています。

過去参考コラム
AI時代、人間は何をすべきか? – kozuka.blog
AIの活用によって大きな差が出る時代 – kozuka.blog
生成AIとの付き合い方 – kozuka.blog

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