先週6日、政府は「新しい資本主義」の実行計画改定案を公表しました。転職しやすい労働市場改革やスタートアップ支援に重点を置き、賃上げを持続しつつ、成長分野への労働移動を円滑化し、成長産業を育成していく狙いがあるようです。
昨年5月、本コラムでは「社会人教育について」というテーマで、賃金が伸びていない状況を踏まえ、問題提議させて頂きました。
社会人教育について – EK Column (kozuka.blog)
私は、日本の転職市場が、まだ成熟していない点が大きな要因と考えています。
では、なぜ成熟しないのか?
これは、政府というより、雇用者側と働き手側、双方の意識の問題にあるような気がします。
意識の問題とは、ネガティブ意識とポジティブ意識です。
ポジティブ意識とは、今回、政府が発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」
に記載があるように、
shiryou1.pdf (cas.go.jp)
- (働き手が)自分の意思で仕事を選択することができる
- 時代や社会環境の変化に応じて、需要のある職種に移動する
- (雇用者にとっては)教育訓練を受けた従業員の割合が増えると、労働者一人当たりの労働生産性や一人当たり平均賃金が上昇する
結果として、社会全体は、
- 成長分野への円滑な労働移動を進め、労働生産性を向上させ、更に賃金を上げることができる
要するに、働き手個人、雇用者側=企業は、会社という枠にとらわれず、個々のスキル・能力アップを図ることが、結果として、社会全体、企業、働き手にとって有益になるという発想です。
一方、ネガティブ意識とは、昨年5月のコラムで示したようなケースです。
- 会社「どうせ、Aさんは数年で辞めるだろうから、使えるだけ使えばいいんじゃないか?」
- Aさん「会社の人事は生え抜き優先だろうから、まあ、自分はプライベート優先で、残業や他の業務はしませんと上司に言っておこう」
双方のデメリットは言うまでもありません。
会社のデメリット:生産性低下、周囲に与える士気低下
Aさんのデメリット:スキルアップ(=年収アップ)しないまま、歳だけとっていく
また、社会全体のデメリットは、賃金が上がらないから、消費と生産が停滞し、デフレから脱却できない
では、ポジティブ意識とネガティブ意識の根本的な違いは何か?
もう、読者の皆さんはお気付きかもしれません。
ポジティブ意識は長期的、ネガティブ意識は短期的というものの見方の特徴があります。
教育は、子どもの教育であっても、社会人の教育であっても、共通点は即時の結果が得られないということです。言い換えれば、長期的な視点が必要です。
例えば、子どもの成績向上を目指して塾に通わせたとしましょう。その結果、3カ月後の全国模擬テストで偏差値が5上がりました。確かに、短期間で偏差値が上昇し、志望校を高いレベルに設定できたと言えます。しかし、人生全体を見ると、偏差値が5上がったことで人生が大きく変わった人はほとんどいないのではないでしょうか。
社会人の教育も同様です。雇用者と従業員はお互いに長期的な視点を持って取り組む必要があります。例えば、3カ月のリスキリング研修を受けてデータベースのスキルを学んだからといって、すぐにデータベースエンジニアになれるわけではありません。熟練したエンジニアと実際の案件に携わり、データベースの実際の利用方法を自分自身の目で確認しなければ、独り立ちすることは難しいでしょう。
リスキリングにも時間がかかります。雇用者と従業員は数年から5年程度の時間軸で相互に取り組む必要があるのです。
私は、自分が代表を務める会社の新入社員の入社式に、「会社ではなく、社会で必要とされる人材になってください」とコメントしました。
会社の経営が決して楽ではない時こそ、長期的視点で人への投資に取り組むべきと考えます。
<余談>
本コラムで扱った話題で大きく前進した課題もあります。
昨年2022年8月、「日本で起業を増やす方法」というテーマの中で、起業に二の足を踏む大きな原因として、代表者の連帯保証を取り上げました。私は提言の中で、「一生かかっても払えないお金を連帯保証させるという制度がなくならない限り、政府がどんな施策を打とうが、日本で起業家は増えることはない」と断言しました。
日本で起業を増やす方法 – EK Column (kozuka.blog)
⇒ もちろん、政府、関係省庁も同時に最終的な検討段階だったのでしょうが、同年2022年12月23日、経済産業省は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を更に加速させるため、「経営者保証改革プログラム」を策定し、すでに実行されました。
経営者保証改革プログラムを策定しました (METI/経済産業省)

コメントを残す