5月2日から、日本経済新聞で教育岩盤”揺らぐ人材立国”という教育に関する特集が掲載されていました。
人材確保と人材育成は、スタートアップ企業、中小企業、大企業等、会社の規模を問わず、永遠の課題でありますが、現在の日本の社会人教育の課題について、私なりの意見を述べたいと思います。
私は1987年に大学を卒業し、富士銀行(現みずほ銀行)に就職しましたので、終身雇用が前提の就職でした。よって、私は15年の銀行勤務で、新入行員研修、融資研修、人事評価研修、デリバティブ外部研修、意思決定プログラム研修、海外勤務経験による語学習得や国際経験等、ほぼ毎年多くの教育機会を得ることができました。
終身雇用制度は、戦後、社会が混乱し多くの人が不安定な生活を余儀なくされる中で、働き手=労働者は収入の安定=生活の安定を求めていました。一方、雇用する会社(使用者)も、高度成長期では、会社の成長を阻害する要因は人材不足であったため、収入の安定を保証する代わりに、定年まで勤務してもらうことは会社側にもメリットが大きく、終身雇用制度は労働者と使用者のニーズが合致した制度であったと言えます。
終身雇用制度のベースである年功序列の昇給制度や退職金制度は、会社が置かれた市場環境や業績が右肩上がりであれば持続することができましたが、その環境はバブル経済崩壊によって一変しました。
その結果、日本の平均年収は下記の通り、30年前と比較してマイナスという事態となっております。
<平均給与の推移>

出所:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-08-02.html
海外では、ポジションに応じて明確なジョブディスクリプション=仕事の定義があり、その定義に適した能力がある人を雇用する、いわゆる「ジョブ型雇用」が一般的です。
私はスイス、米国、香港で仕事をした経験がありますが、人材採用は基本的に「ジョブ型雇用」でありました。よって、採用時点で決められた、もしくは契約した職務範囲から外れることはなく、使用者と労働者の合意がない限り、職務範囲が変更されることはありません。
したがって、より高い収入や待遇を得るためには、一旦会社を辞めて再教育を受けるか、転職をする必要があります。
キャリアアップのための転職、自己啓発、資格取得等が自然と行われます。
では、ジョブ型雇用が日本で定着しているかと言えば、転職が当たり前となった現在では定着しているかもしれませんが、平均年収の推移を見る限り、キャリアアップが実現できるジョブ型雇用にはなっていないのではないかと思います。
悪い見方をすると、25歳で転職した人は、10年経って35歳になっても、25歳当時とあまり代わり映えのしない仕事をしているので、年収もほぼ同じというパターンです。更に10年経って、45歳になっても、同じことの繰り返しです。25歳当時の仕事に少し経験が付加されたくらいでは、雇用者も大きく年収アップしたオファーを出せないといったケースが多いのではないでしょうか?
教育のない、形式的なジョブ型雇用のデメリットは、上記のような人材を多く生み出してしまう点であると考えます。
ここからは、社会人教育の実態をわかりやすくするために、会社(使用者)と雇用者の本音を少し極端な例として紹介します。(もちろん、フィクションです)
- 会社「どうせ、Aさんは数年で辞めるだろうから、使えるだけ使えばいいんじゃないか?」
- Aさん「会社の人事は生え抜き優先だろうから、まあ、自分はプライベート優先で、残業や他の業務はしませんと上司に言っておこう」
双方のデメリットは言うまでもありません。
会社のデメリット:生産性低下、周囲に与える士気低下
Aさんのデメリット:スキルアップしないまま、歳だけとっていく
日本は戦後から高度経済成長期まで終身雇用を維持し、バブル経済崩壊によって、終身雇用制度が維持できなくなるという後ろ向きの理由で、形式的かつその場しのぎで、ジョブ型雇用が広まってきた印象があります。
もちろん、自分の自由な時間を活用して、自ら再教育に取り組む、あるいは、新しいスキルを身に付けている人もいると思いますが、平均給与の推移や下記の国際比較を見る限り、この最悪な例が多かったと言わざるを得ません。

今、当社を含め、日本企業は終身雇用でもなく、いわゆる欧米型のジョブ型雇用でもない、日本人の仕事に対する考え方やメンタリティーを活かした日本特有の社会人教育と雇用を生み出さなくてはならない時に来ていると考えます。
この課題は、学校教育、大学教育、社会制度等様々な問題が複雑に絡みあっており、機会あれば、読者の皆様と議論したい話題であります。
是非、ご意見お寄せください。
