日本で起業を増やす方法

日本で起業家を増やそうと、政府や地方自治体が様々な施策を講じているのに、成果が上がっているとは言えない状態が続いています。

1. 起業の国際比較

下記は世界のスタートアップ(起業)のデータを取りまとめているStartup Rankingからの抜粋となります。
https://www.startupranking.com/countries

会社設立数とは違うので、Startup Rankingにおけるスタートアップの定義を補記しておきます。

For Startup Ranking, a startup is:
“An organization with high innovation competence and strong technological base, which has the faculty of an accelerated growth and maintains independence through time. The max lifespan should be of 10 years.”
⇒ 高いイノベーション力と強い技術基盤を持ち、加速度的に成長する力を持ち、長期にわたって自立性を維持することができる会社。創業して10年以内の会社

赤の点線は私が3年間勤務したスイスです。スイスの人口は約860万人なので、都道府県別人口で比較すると、大阪府や神奈川県くらいの人口です。高等教育が進んでいるのが要因と言われるかもしれませんが、スイスの高校生が大学へ進学する進学率は20%程度です。(私が勤務していた20年前は10%そこそこだったと記憶しています)。一方、高いイノベーション力、技術力のあるスタートアップ数は日本より多い760社です。

2. 起業への障壁をデータから読む

(1) 起業に関する客観的なデータとしては、「ベンチャー白書2021」(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)に端的にまとまっているので、図を抜粋したいと思います。

(図表2-4,図表2-9 出所:一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2021」第2章 ベンチャー企業向けアンケート調査)

誰に起業を反対されるか?という質問に対し、反対された人のトップ3が父、母、配偶者の身内です。

日本で起業が少ない最大の原因は?という質問に対する回答のトップは、“失敗に対する危惧(起業に失敗すると再チャレンジが難しい等)”でした。

(2) なぜ、両親や配偶者が起業に反対するのか?
おそらくは、起業しようとした人はこのような意見を父親から言われたのではないでしょうか?
・ お前に起業なんて、できるわけがない
・起業してどうやって稼ぐのか
・失敗したら、どうやって生活するのか
・オレは起業で破産したヤツはたくさん見たが、うまくやったのはごくごく少数だ
・ 破産してもオレは面倒見ないぞ

また、20代~30代で結婚や出産を控えていたら、配偶者からこのようにも言われるでしょう。
・事業がダメになったら、どうやって生活するの
・この子はまだ成人まで20年あるんだよ、あなたの事業は20年持つの
・ 住宅ローンはまだ3000万円あるのに、本当に大丈夫

(3) なぜ、失敗すると再チャレンジが難しいのか
会社を運営する上で、無借金で運営するのが、なかなか難しい点があると思われます。起業した翌月から売上金が入金されれば、さほど所要(運転)資金は必要ないかもしれませんが、通常は、会社を設立し、事務所を借りて、礼金、敷金、保証金等を支払い、人材を雇用し、必要なPC,携帯電話等を買い揃え、ようやく営業開始です。
すぐに顧客が見つからない、もしくは顧客数が会社の運営経費を賄えない期間は、手持ち資金か、借入金で補うしかありません。
ここからが肝心な点ですが、事務所賃貸やお金を金融機関から借りる際は、日本では代表者個人が連帯保証しなければなりません。
事務所の大家さんや金融機関が(連帯)保証人に対して、お金を支払ってくださいと請求をしてきた場合、保証人であれば「まずは会社に請求してください」と主張することができますが(催告の抗弁),連帯保証人はそのような主張をすることができません。
まさに、債務者=会社=代表者1個人なのです。
ご多分に漏れず、私も会社で借入した資金や事務所賃貸の連帯保証人になっています。

少し前置きが長くなりましたが、なぜ失敗すると再チャレンジが難しいのか?はまさにこの連帯保証人という制度にあります。
会社=法人で金融機関から借りた資金を代表者1個人が支払うことが現実的なのでしょうか?
例えば、会社で借入した2000万円を連帯保証していたため、支払わなければならない。
月給50万円であれば、手取りは38万円くらいでしょう。その手取り額から、家賃もしくは住宅ローン、食費、水道光熱費、子どもの教育費、生命保険料等を差し引くと、ほぼ手元には残らないのではないでしょうか?
⇒ 両親や配偶者の方が反対するのは当たり前のことだと思います。

仮に、生計は両親もしくは配偶者が全額面倒見てもらえる相当ラッキーなケースでも、新たな会社勤務で得る給与(月給50万円の場合)の手取りを全額返済に回しても、53か月(4年5か月)かかる計算になります。借入金額が多額の場合は、一生かかっても払えない金額です。
手取りを全額貯金していても払えない金額の連帯保証させる意味とは、一体どこにあるのでしょうか?

3. 提言

前述の事業に失敗したらお前が払えという文化は、日本における罰則文化に起因しているのではないでしょうか?
古くは、「お前は悪さをしたから、バケツを持って廊下に立っておけ」という文化です。
よく考えると、出来が悪い子が、授業には出られず、廊下でバケツを持っているので、さらに出来が悪くなるという悪循環が発生します。まさに、この悪循環が起業の世界でも起こっています。
前の事業で失敗したため、自分が得た報酬から何年も借入金を返済するのは、実生活で大きな足かせであることは間違いありません。
一方、一生かかっても払えない場合は、自己破産という制度がありますが、自己破産した場合は、再就職しにくい、クレジットカードが作れない、ローンを組めない等、こちらも再出発や実生活に大きな足かせをはめられることは間違いありません。

根本原因である連帯保証人制度:債務者=会社=代表者1個人、すなわち、一生かかっても払えないお金を連帯保証させるという制度がなくならない限り、政府がどんな施策を打とうが、日本で起業家は増えることはないでしょう。

起業(=新しい事業・産業を創出すること)に対して、多くの人が積極的になれる仕組みの第一歩として、金融機関が企業へ融資する際、代表者や取締役に連帯保証人を求めないことを提言としたいと思います。

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