今月、昨年書いたコラム「営業論シリーズ Vol.2 – kozuka.blog」会話の“時間配分”が営業を決めるを実践する機会がありました。
あのコラムでは、営業現場で重要なのは、顧客に話してもらう時間を最低6割、できれば7割確保することだと解説しました。
今月、ある取引先の社長と初めて面談する機会がありました。
事前に取引先担当者との間で設定していたゴールは、関係構築と今後の協議の土台づくり。いわば「次につながれば成功」という位置づけでした。
ところが実際の面談では、想定をはるかに超える成果が生まれました。
その場で具体的な方向性が定まり、担当者レベルでは踏み込めなかったテーマにまで話が進んだのです。
振り返ると、私が発言していたのは、全体の2割ほどでした。
プロと素人の構図
面談当初、私は少し緊張していました。
相手は鉄の業界で長年活躍されてきたプロ中のプロ。
一方、私は材料試験機メーカーの経営に携わって3年目。製造業の世界では、まだまだ勉強中の立場です。
開始から20分ほど、私は「この方と自分の共通項は何か?」を探していました。
専門知識では到底かなわない。
技術の深掘りをすれば、むしろ浅さが露呈する。
では、どこに接点を見出せるのか。
そこで私から持ち出したのが、「製品販売におけるファイナンスの重要性」というテーマでした。
話題が変わった瞬間
製造業の世界では、良い製品をつくることが第一義です。
しかし、実際には顧客側の視点がより重要になります。購入価格、投資回収、設備の償却、顧客側の資金計画といった“お金の視点”をどう設計するかで、ビジネスの勝敗は大きく変わります。
その話題に触れた瞬間、空気が変わりました。
相手の社長の表情が一段と真剣になり、そこから一気に会話が広がっていきました。
鉄の技術論ではなく、経営と資本効率の話。
その後は、私が売り込みをする必要はありませんでした。
むしろ、相手が自らの構想や課題を語り始め、こちらが耳を傾ける時間が続きました。
気がつけば、私の発言は全体の2割。
残り8割は、相手が話していました。
沈黙の重要性
前回コラムで書いたように、沈黙を恐れない営業は、相手に「自分のペースで考えられる安心感」を与えます。その余白の中で、相手は自分の課題を整理し、気づきを得ることができます。結果的に、「あなたと話していると、自分の考えが整理できる」と感じてもらえるのです。
つまり、「沈黙は相手に“思考の場”を提供する時間でもある」ということを実践しただけです。
今回の面談で起きたことはまさにそれでした。
相手が情熱を持って語れるテーマを見つけ、その領域に会話を移す。
すると、商談は「売る場」から「共に構想する場」へと変わります。
営業の場における“楽しさ”とは、相手が自分のビジョンを自由に語れる空間をつくることなのかもしれません。
そして、そのために必要なのが、
・話しすぎないこと
・共通項を探すこと
・相手が熱量を持つテーマを見極めること
この三つだと、改めて実感しました。

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