営業は「聞く力」が9割ではない ― 沈黙の使い方
先日、グループ会社の社員と話している中で、「営業は聞く力が大切ですよね」という話題になりました。確かに、多くの営業本には「話すより聞く」「顧客のニーズを引き出すことが大事」と書かれています。これは間違いではありません。ですが、私はいつも少し違和感を覚えます。
なぜなら、“聞く力”が大切だという言葉の陰で、実はもっと重要なのに語られないものがあるからです。
それが、沈黙の使い方です。
「聞く」と「黙る」は似て非なるもの
多くの営業が「聞く=質問を繰り返すこと」と誤解しています。「御社の課題は?」「どんな点を改善したいですか?」と矢継ぎ早に質問し、相手の話を“引き出そう”とします。
しかし、相手からすれば、それは尋問のように感じることもあります。
一方で、優れた営業は「質問したあとに沈黙をつくる」ことを知っています。
たとえば、相手が考え込んでいるときに無理に言葉を挟まず、静かに待つ。
この沈黙の間に、相手は「自分の話をちゃんと受け止めてもらっている」と感じ、より本音を語り出すのです。沈黙は、相手の心を開く“余白”です。
会話の“時間配分”が営業を決める
営業現場では、こちらが一方的に話す時間が長くなるほど、顧客が話す時間は確実に短くなります。私は常に、顧客に話してもらう時間を最低6割、できれば7割確保することを意識しています。一見すると「聞き役に徹すればいい」と思われがちですが、これは単に口数を減らすことではありません。ポイントは、沈黙の使い方にあります。
“こちらが黙り、相手が考える時間”をつくることで、自然と話す比率は相手のほうに傾いていきます。つまり、沈黙は「時間配分を整える技術」でもあるのです。
こちらが話している限り、相手の本音は出てきません。相手が考え、言葉を探している時こそ、沈黙の価値が発揮されます。
沈黙を活かす三つのコツ
では、実際の営業現場でどう沈黙を活かせばよいのでしょうか。
私は、次の三つのポイントを意識しています。
- 「間」を恐れない
商談が静まり返ると、多くの営業は慌てて何かを話そうとします。
しかし、本当に信頼関係を築きたいなら、その沈黙を受け入れる勇気を持つこと。
5秒でも10秒でも、相手が考えている間を尊重することが大切です。 - 相手の表情を読む
沈黙の時間は、相手の表情や反応を観察するチャンスでもあります。
「迷っている」「納得していない」「興味を持っている」など、言葉以上の情報がそこに現れます。 - “言葉を探す相手”を支える沈黙を
相手が考えながら話しているときに割り込むのは、思考の流れを断ち切る行為です。
じっと待ち、必要なときにだけ短い相づちを打つ。それが信頼の沈黙です。
上記3点で、最も大切にしている点を一つだけ挙げるなら、私の場合は2“相手の表情を読む”です。
沈黙がもたらす“余白の営業”
沈黙を恐れない営業は、相手に「自分のペースで考えられる安心感」を与えます。その余白の中で、相手は自分の課題を整理し、気づきを得ることができます。結果的に、「あなたと話していると、自分の考えが整理できる」と感じてもらえるのです。
つまり、沈黙は相手に“思考の場”を提供する時間でもあります。
それは、資料や話術ではつくれない、信頼の時間投資なのです。
営業の現場では「話し上手」「説明上手」が評価されがちですが、真のプロは“待てる人”です。
今日からできる行動提案
- 顧客に“7割話してもらう”と決めて商談に臨む。
会話の主役は自分ではなく、あくまで相手であると明確に意識してみてください。 - 相手が話し終えたあと、3秒だけ待ってみる。
その3秒で、相手がもう一言付け加えることがあります。そこに本音が隠れていることが多いです。 - “沈黙は敵ではない”という感覚を体に覚えさせる。
社内会議や同僚との会話でも、あえて沈黙を入れる練習をしてみてください。
会話の品質が大きく変わるはずです。
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