企業現金100兆円にメス ─ 眠る資金を動かす“循環課税”の提案(読了目安時間:5分)

日本経済の構造的な問題の一つに、「資金が動かない」という現実があります。
個人は将来不安から消費や投資を控え、企業は利益を内部留保として積み上げる。結果として、資金の流れが滞り、需要も成長も鈍化しています。
先週22日付の日経新聞「企業現金100兆円にメス」は、日本経済の停滞要因である資金の滞留を正面から指摘しています。金融庁はコーポレートガバナンス・コードを改訂し、上場企業に対し過剰な現預金を成長投資へ振り向けるよう促す方針を示しました。上場企業の現預金は100兆円を超え、内部留保は539兆円に達しています。物価上昇下で現金を積み上げ続ける非効率は、もはや社会的課題と言えます。

<スイスを参考にする>
私は3年間スイスに在住していた経験があります。スイスにはキャピタルゲイン課税(株式投資等でリスクを取って利益が出た場合の課税)はありませんが、その代わりに「金融資産課税」があります。日本でいえば“資産税”に近い仕組みで、預金・有価証券・不動産などの純資産に対して、州と市町村が0.1〜1.1%の範囲で課税しています。税率は低いのですが、資産を「動かさずに持ち続ける」ことにも一定の負担を求める仕組みです。スイスではこれが地方財源を支えると同時に、人々が資金を投資や寄付といった社会的に意味のある活動へ動かすきっかけにもなっています。

<日本は堂々巡りの議論続き>
日本では、財源が議論になるたびに「所得減税は難しい」「消費税を下げれば税収が足りない」といった議論が繰り返されます。しかし、私はかねてから財政健全化の道は、「眠っている預貯金」に対する課税を検討すべきだと考えています。
特に法人の過剰現預金に対して、スイス型の“低率で広く”課税する仕組みを導入すれば、財源確保だけでなく企業行動そのものを変える契機になり得ます。
企業が現金を抱え込む背景には、将来の不確実性や金融市場への不信、あるいは経営者のリスク回避志向があります。しかし、現金を過剰に保有することは、株主や従業員、社会全体にとって必ずしもプラスではありません。たとえば現預金が純資産の30%を超えるような企業については、「成長投資に振り向けていない資金」として一定の課税を検討する余地があるでしょう。

<実行案>
税率はまず、0.1〜0.3%程度の低率でスタートすれば十分です。現預金100兆円のうち、仮に半分を課税対象とすれば、0.2%でも年間1,000億円の税収が見込めます。
しかもこの制度の狙いは、税収を増やすことではなく、「現金を眠らせず、動かす」ことにあります。
投資・研究開発・賃上げ・M&A・スタートアップ支援など、経済循環を生む活動に使われる資金は課税対象から除外すべきです。
つまり、企業にとっては「使えば課税されない」「眠らせれば課税される」という極めてシンプルな仕組みになります。これなら過剰現金を抱え込むより、未来への投資に回すほうが合理的ですし、経営者のリスクリターンの意識やスキル向上にもつながります。

<まとめ>
私が提案したいのは、「法人預貯金課税」という言葉ではなく、「循環促進税」という考え方です。企業の現預金にメスを入れる目的は、罰ではなく誘導にあります。動かすほど税が軽くなる。眠らせるほど重くなる。
このシンプルな原理こそ、投資・消費・所得を回す、新しい日本経済の循環エンジンになると私は考えます。

過去コラム:
財政健全化と投資効率を両立させる方法 – kozuka.blog
異次元の少子化対策とは? – kozuka.blog

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