営業の本質(価値の本質・続編)──“買いたくなる気持ち”に火をつけるものは何か?

先々週のコラム「価値の本質」は多くの方に読んでいただきました。今回はその続編として、“人はなぜ買うのか”という根源的な問いを掘り下げてみたいと思います。
先々週コラム:「売っているモノ」と「買っているコト」は一致しているか? —価値の本質とは – kozuka.blog

前回は「売っているモノ」より「買われているコト」を理解することが重要であることをお話ししましたが、ではそもそも人はなぜ“コト”を買うのでしょうか?
答えは案外シンプルです。
「自分(あるいは自社)の中にある課題を解決したい」「満たされていない感情や期待を埋めたい」「不足している部分を補いたい」──そのような欲求から、人は購買行動を起こします。つまり、買う理由は営業側が一方的に作り出すものではなく、すでに顧客の内側に存在しているのです。

とはいえ、理由があっても行動に移るとは限りません。
ここで思い出すのが、映画監督スティーブン・スピルバーグの言葉です。
「映像で感動は与えられる。でも、人を泣かせるには音楽が必要だ。」
営業も同じです。いくら優れた商品やサービスを論理的に説明しても、それだけでは人の心は動きません。顧客が“買いたくなる気持ち”を抱くには、感情に響くもうひとつの力──“音楽”のような要素が必要なのです。
では、その“音楽”とは何でしょうか?
私は、「共感」「タイミング」「空気感」「波動」といった、言語化しづらいけれど確実に心に届く無形の要素だと考えています。
たとえば、相手が困っているタイミングを見極め、過不足のない言葉で寄り添う提案をする。あるいは、顧客の背景や立場に本気で共感し、「この人なら任せられる」と思ってもらう。こうした目に見えない働きかけが、顧客の“理由”を“行動”へと変える鍵になります。

私が営業という仕事を好きなのは、そこに「論理的思考力」「感情」「度胸」という、ビジネスにおける3つの本質が詰まっているからです。
論理で納得を生み、感情で共感を得て、最後の一歩を踏み出す勇気が求められる。これほど人間力が問われる仕事は、そう多くありません。
「論理」と「感情」までは何とか届きそうだが、「度胸」には自信がないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは場数を踏めば必ず身につきます
たとえば、プレゼンを100回経験することが成長の目安だとすれば、週1回の人は2年弱かかりますが、週5回の人ならわずか5カ月で到達できます。恐れずに、まずは一歩踏み出して、数をこなしてみてください。

営業とは、相手の中にある“買いたくなる理由”を見出し、それを“買いたくなる気持ち”へと変えていく仕事です。
論理と感情、データと直感が重なり合うとき、営業は単なる取引を超え、共鳴する“物語”になります。
ぜひ、皆さんも自分だけの営業ストーリーに挑戦してみてはいかがでしょうか。

最後に、私が尊敬してやまないピーター・ティール氏の著書『Zero to One』から印象的な一節をご紹介して締めくくります。

“どんな仕事でも、営業能力がスーパースターと落ちこぼれをはっきりと分ける。ウォール街では新卒は数字をはじく「アナリスト」からスタートするけれど、最終目標はディールメーカーになることだ。弁護士は法律の専門家であることに誇りを持っているけれど、法律事務所のリーダーは大手クライアントを獲得できる儲け頭だ。学問的に業績によって評価される大学教授でさえ、専門分野で名を上げる宣伝上手な学者に妬みを抱く。歴史や英語についての学術アイデアは、いくら知的に優れていてもそれだけでは話題にならない。基礎物理学の研究や癌研究の未来でさえも、売り込みにかかっている。企業人でさえ営業を軽んじる最も根本的な理由は、世の中全てのあらゆるレベルが本当は営業に動かされていることを、社会が隠そうとしているからだ”
(出所:「Zero to One」174頁より抜粋)

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