基礎学力の重要性

先週のコラムでは受験生に向けたメッセージをお伝えしましたが、今回は「今学んでいることが社会に出て本当に役に立つのだろうか?」と不安を抱いている学生の皆さんに向けて、基礎学力の重要性をテーマにお話しします。私自身の経験を交えながら、基礎学力が社会に出てどのように役立つのかを解説したいと思います。
先週コラム:大学受験生とそのご家族へのメッセージ – kozuka.blog


国語
社会に出て最も役立つ基礎学力の一つは、間違いなく国語力、特に文章力です。文章力のあるビジネスパーソンは、主語と述語が明確で起承転結もしっかりしているため、自分の考えや主張を相手に伝えやすくなります。
たとえば営業の現場では、プレゼンや商品説明など、相手に何かを伝える場面が多々あります。このとき、正確な国語力を身につけている方が圧倒的に有利です。主語や述語が曖昧だと、相手に内容が伝わりにくくなってしまいます。
また、社会人になってからも読書や業務に関係するレポート・論文を読む習慣を続けることで、5年、10年とキャリアを重ねるうちにより良いポジションにつける可能性は高まるでしょう。
中学生や高校生の中には、国語の成績がなかなか伸びず悩んでいる方もいるかもしれません。そのような方には、新聞のコラム書き写しをおすすめします。朝日新聞の「天声人語」、読売新聞の「編集手帳」、毎日新聞の「余録」、日経新聞の「春秋」など、どれでも構いませんので、まずは3カ月間、書き写してみてください。コラムは限られた字数の中で筆者の視点や考えを的確に表現しており、単に真似るだけでも書き出しから結論までの流れ、段落構成、接続詞の使い方などを効率的に学ぶことができます。
もちろん、国語力に自信のない社会人の方にも同じ学習法は有効ですので、ぜひ試してみてください。


英語
日本国内では少子高齢化が進み、経済規模の拡大を望むのは難しい状況にあります。一方で、グローバル経済は拡大の一途をたどっており、世界人口は2050年まで増え続けるという予測もあります。将来的にグローバル経済がさらに拡大していくのは、十分に考えられることです。
もし、こうしたグローバル経済の恩恵を受けたい、あるいは自分の仕事の選択肢として海外で働く・外資系企業でキャリアを築くという道を視野に入れるのであれば、英語力を身につけておくと大きなアドバンテージになります。
私は帰国子女でもなく、留学経験もありませんでしたが、銀行員時代の33歳から3年間、運よくスイスのチューリッヒに駐在する機会を得ました。赴任前、上司に「語学研修を受けさせてもらえないでしょうか?」と尋ねたところ、「君ならなんとかなるだろう」という一言で送り出され、現地へ向かうことに。日本企業から海外へ転勤しても、社内で日本人同士ばかりで過ごして語学力がほとんど伸びないまま帰国するケースも少なくないようですが、私の場合はスイス人スタッフ2名と私の3名で株式トレーディングチームを組んでいたため、ミーティングや会食もすべて英語でコミュニケーションしなければなりませんでした。
さらに、スイス勤務の後はサンフランシスコのベンチャーキャピタル、Crosslink Capital(https://www.crosslinkcapital.com/) に出向し、本場の英語に触れる機会も得ました。そのおかげで、当時の同僚とは今でも友人でありビジネスパートナーでもあります。また、現在私が代表を務める会社では、ドイツの Zwick Roell( https://www.zwickroell.com/)社と事業提携しており、同社代表とも直接やり取りできる英語力は、交渉や事業推進に大いに役立っています。
翻訳機や翻訳ソフトがある時代とはいえ、英語を学ぶ意義は単に言語を理解するだけでなく、異文化を理解し、議論に入り込む力を養うことにあります。むしろ、翻訳技術が進歩するほど、英語を自分で使いこなせる価値は高まると考えています。
英語学習で効率的に力を伸ばしたいなら、私はシャドーイングをおすすめします。聞こえてくる英語音声をほぼ同時に声に出して繰り返すこの方法は、リスニング力やスピーキング力だけでなく、発音やイントネーション、リズム感、スピード感の習得にも有効です。最近は字幕付きの YouTube チャンネルも多いので、ぜひ活用してみてください。


数学
実は私は、高校2年の終わりに「科目数の少ない私大を狙ったほうが現役合格しやすいのでは」という考えで、大学受験では数学から逃げました。結果的に第一志望には合格できず、1年浪人して中央大学法学部に進学しました。
しかし、その後銀行のディーリングルームに配属され、オプションやスワップ取引の基礎理論は数学の世界だと知り、25歳頃から「大学への数学」を書店で買い直し、高校数学からやり直したのです。さらにオプション理論を学ぶ外部の講習にも通い、「できません」と言っていられない状況だったので、必死に勉強しました。そのとき、「こんなに数式や理論と向き合うなら、最初から国立大学を目指しておけばよかった…」と本気で後悔したほどです。振り返れば、私がこれまでの人生で唯一悔いが残っているのが、高校2年の終わりに私大専願の道を選んだことかもしれません。
とはいえ、今振り返ると、金利トレーディングや値付け業務では、

1. 微分による感応度・リスク計測(デュレーション・コンベクシティ等)
2. 積分による割引因子やフォワードレート計算(連続複利・カーブ構築等)
3. 連続時間モデルや確率微分方程式を用いる金融工学の理論的背景

など、微分積分の知識が不可欠でした。私のキャリアには特殊性もありますが、「今勉強していることがどこで役立つかはわからないけれど、いつか必ず役立つときが来る」ということを、ぜひ伝えたいと思います。


おわりに
学生の皆さんに限らず、社会人・ビジネスパーソンの皆さんも、今一度基礎学力を見直してみてはいかがでしょうか。国語・英語・数学——基礎をしっかり固めることで、将来の選択肢は確実に広がります。私自身の経験が、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

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