先週、当社は個人投資家向けセミナーを開催しました。
東京衡機(7719)個人投資家向けIRセミナー
上場企業として、投資家の皆様に当社の事業や将来性をご理解いただくことは極めて重要です。特に当社のようなニッチ分野の製造業は、普段の生活の中で一般の方が製品やサービスに直接触れる機会がほぼなく、「何をしている会社なのか」が伝わりにくい側面があります。
だからこそ、IR(投資家向け広報)活動では、単なる説明ではなく、「伝わる工夫」が必要になります。
今回のセミナー資料は、主に26歳の若手社員を中心に作成してもらいました。
私が彼に伝えたことは、たった二つです。
一つ目は、
「スライドは20枚以内にすること」
前回のセミナーでは、どうしても情報量が多くなり、プレゼン資料の枚数も増えてしまいました。しかし、質疑応答を含めて55分という限られた時間の中で、本当に伝わるプレゼンをするには、情報を絞り込む勇気が必要です。
伝えたいことを全部詰め込むのではなく、「何を持ち帰ってもらうか」を明確にする。
これはプレゼンだけでなく、営業でも、経営でも同じことだと思っています。
二つ目は、
「文字を減らし、図やチャートで伝えること」
プレゼンテーションの強みは、文章を読むことではなく、“イメージを共有できる”ことにあります。
長い文章を並べるなら、資料を配って読んでもらえばよい。
しかし、人前で話すプレゼンには、「視覚で理解してもらう」という別の価値があります。
この二つだけを伝えて、あとは若手に任せました。
ところが、ここからが面白かったのです。
彼はもともと非常に真面目で、良い意味で完璧主義なタイプです。
毎日のように遅くまで資料作成に取り組み、何度も修正を重ねていました。
しかし、単にパソコンに向かって資料を作っていたわけではありません。
試験機事業の担当者に話を聞き、
エンジニアリング事業の現場の声を拾い、
グループ会社の人たちからも意見を集める。
「この説明で本当に伝わるのか?」
「この図で事業の強みが見えるか?」
「投資家が知りたいのは何か?」
そんな問いを繰り返しながら、資料を磨いていったのです。
結果として、素晴らしい資料が完成しました。
もちろん、資料そのものの完成度も高かったのですが、私がそれ以上に嬉しかったのは、その過程です。
彼は資料作成を通じて、会社というものを立体的に理解したはずです。
普段、自分の部署で働いていると、どうしても視野は限定されます。
しかしIR資料を作るとなると、会社全体を見渡さなければなりません。
どんな事業があり、
どんな強みがあり、
どんな課題があり、
なぜこの会社が存在しているのか。
そしてもう一つ、大切なことも学んだと思います。
会社は、社員だけで成り立っているわけではないということです。
株主が資本を支え、
顧客が仕事をくださり、
取引先が製品やサービスを支え、
金融機関が資金面を支える。
多くの人たちの関与によって、会社という存在は初めて成り立っています。
これは経営者にとっては当たり前のことですが、若いうちにこの感覚を持てるかどうかは、非常に大きな差になります。
「自分の仕事」だけを見ている社員と、
「会社全体の仕組み」を理解している社員では、
成長のスピードも、判断の質も、まったく変わってきます。
今回の経験で、彼は間違いなく一段成長したと思います。
そして私にとっても、大きな希望になりました。
会社の全体像を見ようとする20代の社員がいる。これは経営者として、本当に心強いことです。
日本では、「若い人はまだ経験が足りない」と言われがちです。
もちろん経験は大切です。
しかし、経験は与えられるものではなく、機会の中で育つものでもあります。
責任ある仕事を任せ、
考える場を与え、
悩みながら乗り越える。
その積み重ねが、人を育てます。
私は昔から、
「物をつくる前に、人をつくる」
という考えを大切にしています。
会社の成長とは、売上や利益だけではありません。
人が育っているかどうか。そこにこそ、本当の企業価値があると思っています。
今回のIRセミナーは、投資家の皆様への説明の場であると同時に、若手社員の成長の場でもありました。
経営とは、こういう瞬間があるから面白いのだと思います。

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