長年仕事をしていると、不思議なことに気づきます。
同じような能力を持ち、同じように努力しているにもかかわらず、仕事に恵まれる人と、なかなか成果に結びつかない人がいます。
40年近くビジネスの世界に身を置いてきた私は、運の良い人には、運を引き寄せる何かがあるように思えてなりません。
では、仕事の運気を上げるにはどうすればよいのでしょうか。
この問いを考えるうえで、私が大切にしているのが、京セラの創業者である稲盛和夫氏の「人生・仕事の方程式」です。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
稲盛氏は、人生や仕事の結果は、この3つの要素の掛け算によって決まると説いています。
能力と熱意は、それぞれ0点から100点。一方、考え方だけはマイナス100点からプラス100点まであるとされています。
この方程式の興味深いところは、足し算ではなく、掛け算であることです。
能力が多少劣っていても、誰にも負けない熱意を持ち、努力を重ねれば、大きな成果を生み出すことができます。反対に、どれほど優れた能力を持っていても、熱意がなければ成果は限られます。
そして何より重要なのは、考え方がマイナスであれば、能力や熱意がどれほど高くても、掛け算の結果はマイナスになってしまうということです。
私は、この3つの要素の中で、最も難しいのが「考え方」ではないかと思っています。
能力を高めるには勉強をし、経験を積めばよい。熱意を高めるには目標を持ち、努力を重ねればよい。
しかし、考え方を常にプラスに保つことは、それほど簡単ではありません。
なぜなら、私たちは自分でも気づかないうちに、マイナスの考え方に陥っていることがあるからです。厄介なのは、こうしたときほど、自分の考え方が間違っているとは思わないことです。むしろ、自分には正当な理由があり、相手や環境に問題があると考えてしまいます。
自分がマイナスの考え方に陥っていることに、自分自身が気づいていない。
ここに、考え方をプラスに保つことの難しさがあるのではないでしょうか。
以前、このコラムで、広島県尾道市の千光寺に掲げられている「極楽、地獄の岐れ路」という教えをご紹介したことがあります。
(過去コラム:節分は「節を開ける」日 )
そこには、「幸福への近道」と「不幸を自分で造る人」という二つの道が、具体的な人間の姿として示されています。
「幸福への近道」には、
「感謝して真剣に努力する人」
「人も自分をも尊敬できる人」
「何事も善意に解釈する人」
「良心と優しい愛情に満ちた人」
「親切で人の為によく尽くす人」
などが挙げられています。
一方、「不幸を自分で造る人」には、
「絶えず不満や愚痴の多い人」
「他人の和を乱す人」
「自己の気儘自分本位の人」
「公徳心なく迷惑を掛ける人」
「依頼心の強い苦労に負ける人」
などが挙げられています。
私は、この二つの道こそ、稲盛氏の方程式における「考え方」のプラスとマイナスを、実にわかりやすく表しているのではないかと思うのです。
千光寺の教えは、特別な才能を身につけなさいとも、他人に勝ちなさいとも説いていません。
感謝すること、他人を尊重すること、物事を善意に解釈すること、そして真剣に努力すること。
どれも当たり前のように思えることばかりです。
しかし、その当たり前のことを、毎日、どのような状況でも実践できるかと問われれば、決して容易ではありません。
例えば、部下が期待どおりの仕事をしてくれないとき、「なぜできないのか」と腹を立てることもできます。しかし、「自分の説明は十分だったのか」「相手が力を発揮できる環境を整えていたのか」と考えることもできます。
同じ出来事であっても、受け止め方によって、その後の行動は大きく変わります。
自分の利益や保身、あるいは他人への不満から行動するのか。それとも、会社を良くしたい、社員に成長してほしい、顧客の役に立ちたいという思いから行動するのか。
同じ厳しい言葉であっても、その根底にある考え方によって、相手への伝わり方も、最終的な結果も変わってくると思います。
そして、この考え方は、仕事の運気とも深く結びついているのではないでしょうか。
人は、自分を尊重し、誠実に接してくれる人を信頼します。感謝の気持ちを忘れず、他人のために努力する人には、自然と協力者が集まってきます。
仕事の運気とは、単に天から降ってくる幸運ではなく、日々の考え方と行動の積み重ねによって、自ら引き寄せていくものだと思います。
私たちは日々の生活の中で、幸福への道と不幸への道、その分かれ道に立っているのではないでしょうか。
不満を口にするのか、感謝の気持ちを持つのか。他人を責めるのか、自分を省みるのか。嫉妬するのか、他人の成功を喜ぶのか。
私自身、まだまだ修行が足りません。だからこそ、日々、自分の考え方がプラスに向いているかを問い続けたいと思います。
仕事の運気を上げるために、まず変えるべきものは、周囲の環境でも他人でもなく、自分自身の考え方なのではないでしょうか。
運気を上げる最も確かな方法は、私たちの心の中にあるのです。
参考
稲盛和夫オフィシャルサイト「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力 | 思想 | 稲盛和夫について | 稲盛和夫 オフィシャルサイト

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