成人の日(読了目安時間:6分)

昨日は成人の日でした。
成人とはいったい何が違うのか?
私が20歳の時は、今に比べるとずいぶんのんびりした学生生活を送っていました。今のように携帯やインターネットがない時代なので、いい意味で時間の余裕がありました。
私は住民票が実家の広島にあった上、大学の学年末の試験前でもあり、実家の広島へ成人の日のために帰省する時間がなかったため、成人式には出席していません。ぼんやりした記憶では、同じような境遇の友人と自分の下宿で、とりとめのない話をしながら安酒を飲んだ――その程度の記憶しかありません。

当時は、インターンシップのような制度はまだ一般的ではなく、就職活動は「青田買い禁止」の趣旨から、大学4年生の8月20日が開始解禁日でした。ですから大学2年生、20歳の頃は、大学の授業へ出て、サークル活動に顔を出し、少々バイトをする、といった具合に、今思えば驚くほどのんびりした学生生活を送っていました。趣味といえば洋楽が大好きで、毎週土曜日、AMラジオの米軍放送 Far East Network でオンエアされる「全米TOP40」を楽しみにしていたことをよく覚えています。情報が少ない時代だからこそ、「待つ時間」そのものが娯楽になっていたのかもしれません。

こののんびりした学生生活の中で、私は意外と授業にも出席していましたし、学業は比較的好きな方でした。後日談ですが、富士銀行(現みずほ銀行)に就職が決まった後、当時のゼミの教授が私の下宿まで訪ねてくれて、「もし君が希望するなら大学院へ受け入れる。教授への道もあるぞ」とお誘い頂いたくらいです。
これには理由があり、父のアドバイスの影響が大きかったと思います。父の言葉で印象に残っているものは、
「大学での勉強は概ね社会に出て役に立たないものだ。だからこそ意味がある。仕事に役に立たない勉強をできる時間は学生時代しかない。」
「会社に就職すれば、どのような会社であろうが、死ぬほど働かせられる。甘い仕事などない。だからこそ、大学時代は“無用の学問”に取り組んで良い。」

今になって思うのは、父が言いたかったのは「損得勘定を一度外せ」ということだったのではないか、ということです。社会に出れば、成果、効率、期限、評価――“役に立つこと”が強烈に求められます。だからこそ、その外側にある学び、遠回りに見える経験が、人間を太くする。父はそれを知っていたのでしょう。

ここで思い出すのが、スティーブ・ジョブズの有名な話です。ジョブズは大学を離れた後も、唯一「カリグラフィー(西洋書道)」の授業だけは面白くて学び続けたそうです。セリフ体・サンセリフ体、文字間隔(カーニング)、美しいタイポグラフィの世界。ところが当時は、それが自分の人生にどう役立つのか、本人にも全く見当がつかなかったのです。しかし10年後、アップルコンピュータで、Macを作る段になって、その学びが“美しいフォント”や“文字組み”として製品に直結していたことに気づくのです。そして彼は、「点と点は、前を向いている時にはつながらない。振り返った時に初めてつながる」と語っています。
‘You’ve got to find what you love,’ Jobs says | Stanford Report

この「後からつながる」という感覚は、成人という節目を考えるとき、とても大切だと思います。成人とは、突然“完成した大人”になることではありません。むしろ、自分の選択に自分で責任を持つ――その覚悟を少しずつ引き受けていく出発点です。責任と聞くと厳しく感じますが、裏返せば「主導権が自分にある」ということでもあります。選ぶのは自分。迷うのも自分。失敗しても自分。けれど、成功して誇れるのも自分です。

ただ、今の20歳は私の時代よりも、はるかに早い段階で“答え”を求められがちです。スマホを開けば世界中の情報が流れ込み、SNSでは同世代の情報が毎日流れてくる。インターンや早期選考も当たり前になり、大学2、3年生でも将来像を語らされる。便利である一方、心が急かされやすい時代になったとも言えるでしょう。

だからこそ私は、成人の日にあえて伝えたいのです。役に立つことだけで人生を埋め尽くさなくていい、と。今すぐ換金できない学び、すぐ成果にならない経験、遠回りに見える読書や寄り道が、のちのち役立ちます。ジョブズの言う「点」は、後からしかつながりません。ならば、今は点を増やす時期だと割り切っていい。むしろ、点の数が多い人ほど、人生のどこかで強い線を引けるようになります。

大人とは年齢ではなく姿勢だと思います。学びをやめない姿勢。誰かのせいにしない姿勢。自分の言葉で語る姿勢。そして、目の前の人を大切にする姿勢。これらが少しずつ備わってくると、少しだけ魅力的な大人になれますよ。
皆さんも、よくドラマや映画で、責任逃れをする大人、いつも誰かのせいにする大人、愚痴や文句ばかり言う大人を観て、「なんて憎たらしいヤツ」だと思ったに違いありません。そんな人物像を反面教師にするのも一つの方法です(笑)

新成人の皆さん、おめでとうございます。
どうか焦らず、自分の人生の舵は自分で握ってください。今日のあなたの「点」は、いつか必ずつながります。


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