先週、銀行勤務時代の後輩と食事をしました。後輩は銀行を辞め、銀行の取引先である事業会社の代表になりました。その会社の創業者はまだ現役で、彼は創業者の決断と行動の速さについて話していました。
なぜ、起業家や事業を創業した人は、決断と行動が早いのか?という問いに対して、答えを一言で集約するなら、「起業家の多くは時間=タイムリミットと戦ってきたから」と言えます。
例えば、あなたが会社を始めるとします。
(創業なので、借入金は想定せず、自己資金のみと仮定します)
貯めた預貯金をはたいて自分の会社へ投資した資本金が500万円だったとしましょう。
ケース1:毎月かかる経費が100万円で、売上・粗利(※1)がゼロの場合、その会社は5カ月で終わります。
500万円-(100万円×5カ月)=ゼロ
ケース2:最初の2カ月は売上・粗利がゼロですが、3カ月目から売上・粗利が50万円あった場合(毎月の赤字は50万円)は、その会社は8カ月維持することができます。
500万円-(100万円×2カ月)=300万円
300万円-(50万円×6カ月)=ゼロ
ケース3:最初の2カ月は売上・粗利がゼロですが、3カ月目から売上・粗利が50万円(毎月の赤字は50万円)、5カ月目から毎月売上・粗利が100万円あった場合(毎月の赤字はゼロ)、手元現金は減ったものの、当面倒産することはありません。
500万円-(100万円×2カ月)=300万円
300万円-(50万円×2カ月)=200万円
200万円-(100万円×nカ月)=200万円
※1 売上・粗利:コンサルティング料や自分自身が役務を提供して売上を計上する場合のように仕入が発生しない場合は、売上=粗利、モノやサービスの仕入をして販売する場合は、売上-仕入代金=粗利。
要するに、早く売上・粗利を獲得できれば、その会社・事業は延命できる=事業継続期間が延びる、すなわち勝負できる時間をもらえるということになります。
確かに上記は極端な例かもしれませんが、会社を長年維持するには、幾多の困難を乗り越えなければなりません。
例えば、現時点で会社を20年以上維持している経営者は、
2008年リーマンショック
2011年東日本大震災
2020年新型コロナウィルス
を乗り越えてきた経営者なのです。
例え、どんなに小さな事業であっても、長期間、事業を維持するということは、想像以上に大変であり、眠れない日があり、資金繰りに奔走する日があるものなのです。
ですから、私はどのような業種、会社であれ、長年事業を維持している経営者を尊敬しています。
売上・粗利を計上することがどれだけ大切かを身に染みてわかっているからこそ、早く決断し、早く行動するのです。
売上・粗利を計上できなければ、従業員・スタッフへの給与支払い、家賃・光熱費の支払い、家族への食費や教育費の支払い、社会保険料支払い等、当たり前に支払うべき支払いができなくなるということで、誰でもそんな事態は避けたいと考え、行動するのが当然でしょう。
時間概念の違いをまとめると、
サラリーマンと起業家、これら二つの立場は、表面上は仕事に従事している点で似ているように見えますが、時間の概念においては根本的な違いがあります。この違いは、日々の仕事へ取り組み方、そして生活の安定性に大きく影響を与えます。ベン・ホロヴィッツの『HARD THINGS』(※2)にもあるように、起業家精神は挑戦と直面することの連続であり、その中で時間は貴重な資源であると同時に、絶え間ないプレッシャーとなっているのです。
創業や業績が下降傾向の会社は、事態(特に資金繰り)は時間とともに悪化するのが常です。
※2 ベン・ホロヴィッツの『HARD THINGS』は、起業家として直面する厳しい挑戦や困難な決断について、著者自身の経験を基にした実践的なアドバイスを提供する名著です。経営の危機、人材管理、リーダーシップの課題など、起業家が遭遇する可能性のある「困難なこと」に対処するための洞察が豊富に盛り込まれていますので、起業や次のステップをお考えの方は、是非ご一読ください。

サラリーマンの時間概念
サラリーマンの時間概念は、一定の給与を得ることに基づいています。彼らは毎月、自分のパフォーマンスにかかわらず、決まった給与を受け取ることができます。これにより、サラリーマンは相対的に安定した生活を送ることが可能になり、経済的な安心感の中で時間を計画し、使うことができます。彼らにとっての時間は、定時での仕事終了や休日が保証されるなど、個人の生活と仕事のバランスを保ちやすいという側面があります。
起業家の時間概念
一方で、起業家の時間概念は、常に変動する収入に基づいています。売上を上げるか、資金調達を成功させなければ自身の給与や社員の給料を支払うことができないため、起業家は日々、事業の成長と存続のために戦っています。ホロヴィッツが指摘するように、これは極めてハードなことであり、起業家は手元の現金が尽きれば、自分の貯金や財産を切り崩してでも会社を維持しなければならない状況に直面することがあります。起業家にとっての時間は、リソースを最大限に活用し、事業の機会を逃さず、常に前進し続けるための戦いです。
時間概念の違いから生じる影響
この時間概念の違いは、サラリーマンと起業家が日々感じる圧力の違い、リスクへの対処方法、そして成功への道のりにおいて、明確な対照を生み出します。サラリーマンは比較的予測可能な環境で働くことが多く、生活の安定性を重視します。一方で起業家は、不確実性が高い環境で働き、事業を成長させるためにはリスクを取ることが不可欠です。
結論
ベン・ホロヴィッツの『HARD THINGS』に示されているように、起業は困難に満ちた道ですが、それに直面する勇気と決断が起業家を定義します。サラリーマンと起業家の間の根本的な違いを理解し、尊重することが、お互いの立場から学び、互いに刺激を受け合うための第一歩です。起業家にとって時間は、常に動き続ける砂時計のようなものであり、その砂粒一つ一つが貴重なチャンス、リスク、そして可能性を象徴しています。サラリーマンとしての生活もまた、その安定性と予測可能性の中で、時間を有意義に使うことの重要性を教えてくれます。
本コラムを通じて、サラリーマンと起業家がお互いの時間概念の違いを理解し、それぞれの価値観や働き方から学び取ることができれば、それはさらに大きな成功への一歩となるでしょう。ベン・ホロヴィッツの『HARD THINGS』が示すように、困難な道を選ぶ勇気こそが、最終的には報われる=大きなリターンを生むのです。

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