新型株式報酬の税負担

27日土曜の日経新聞一面で、約800社の企業が使う新型の信託型ストックオプション株式報酬について、国税庁が5月にも税務処理の見解を公表することがわかったと報じました。企業側は株式売却に対して20%の税金がかかると認識している場合が多いが、国税庁は給与として最大で55%の税金がかかることを示す。導入企業の税負担が増え、200億円規模になるとの試算もある。導入するスタートアップなどで影響が広がりそうだという。

昨年2022年12月、経済産業省は、「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正」(07.pdf (meti.go.jp)というレポートの中で、スタートアップ・エコシステムの抜本強化を打ち出しており、開業率の低さを指摘した上で、スタートアップへ投資する投資家へのエンジェル税制の拡充と同時に、「ストックオプションは、手元にキャッシュが乏しいスタートアップ企業にとって、有効な人材確保の手段」と定義し、税制適格ストックオプションについては、譲渡所得20%を適用するとしていました。今回、日経新聞で取り上げられた信託型ストックオプションは、報道前は税制適格オプションであると認識されていたにもかかわらず、国税庁の見解は、信託型ストックオプションは給与所得であり、最大55%を課税するとしている。

最大55%を適用するメリットは、国として発行企業から源泉徴収額多く徴収できる。⇒200億円税収アップ。

一方、デメリットは、

  1. 日本は起業家寄りの施策は打てない国と認識される。
    経済産業省は起業を増やす施策を打ち出したい、一方、国税庁は起業家やスタートアップで力を試してみたいチャレンジ精神のある社会人にメリットを与えようとしない。
  2. 開業率が上がらない。
    リスクを取る人も、リスクを取らない人も、同じにしか扱われないのだから、リスクは取らないでおこうと思う人が増える。
  3. 優秀な人材は日本で働かない。
    優秀な人材は、基本的に日本語以外で仕事ができ、年収が高いので、より税率が低く、手取り額が多くなる国で働く。
  4. 事業再建をしにくくなる。
    スタートアップと同様の会社としては、事業再建中の会社で、業績不振で財務内容が悪化した会社やレピュテーションが下がった会社は、人材を確保しにくい。企業価値が低い段階=株価が低い時期に、力を貸してくれた社員、役員にストックオプションを付与し、業績が回復し、株価が高くなった時点で行使してもらい、給与以外の株式譲渡益を享受してもらうという、単純なインセンティブプランすら打ち出せないなら、益々人材を確保しにくくなり、事業再建の支障となることは間違いありません。

主要各国のストックオプション税制についてChatGPTに質問したところ、下記の回答がありました。

<米国>
米国では、ストックオプションは通常、所得として課税されます。非認定ストックオプションは行使時に所得税とFICA税(社会保障とメディケア税)が適用され、認定ストックオプションは通常、売却時に長期・短期のキャピタルゲイン税が適用されます。税率は所得レベルとオプションの種類によりますが、所得税の最高税率は37%(2021年現在)です。

<スイス>
スイスの税制は連邦制であり、州によっても異なる税率や規定があります。さらに、スイスは世界中からの移住者が多く、そのための特別な税制度もいくつか存在します。

⇒ スイス・ツーク州について質問したところ、
スイスのツーク州は、ビジネスにとてもフレンドリーな税制で知られています。しかし、具体的な税率や規定は頻繁に変わり得るため、最新の情報を確認するために税務専門家に相談することをお勧めします。以下は、2021年時点での概要です:
スイス全体と同様に、ツーク州でもストックオプションの行使時に課税されます。具体的には、行使価格と市場価格の差額が所得として課税されます。この所得は、所得税の対象となり、連邦、州、および地方の税が適用されます。
ツーク州の所得税率は、所得の高さによって段階的に変化します。具体的な税率は状況によりますが、所得税の合計(連邦、州、地方)は最大でも約30%程度(2021年時点)です。
株式の売却時に得られるキャピタルゲインは、通常、私人の投資とみなされ、税制上の優遇措置があります。特にツーク州では、私人が保有する株式から得られるキャピタルゲインは課税されません。

<英国>
・ストックオプションの取得
イギリスでは、ストックオプションの取得自体は課税の対象となりません。したがって、オプションを授与されたときは税金が課せられません。

・ストックオプションの行使
ストックオプションを行使(つまり、ストックオプションを使って株式を購入)するとき、その「利益」は課税対象となります。具体的には、行使価格(株式を購入するために支払う価格)と市場価格(行使時点での株式の実際の価値)との差が利益とみなされ、所得税および国民保険料が課せられます。所得税の最高税率は45%(2021年時点)であり、国民保険料は約2%が適用されます。
ただし、特定のタイプのストックオプションプラン(例えばEnterprise Management Incentives)は、特別な税制が適用され、一部の税負担が軽減される場合があります。

・株式の売却
株式を売却したときのキャピタルゲイン(売却価格と購入価格との差)は、資本利得税の対象となります。資本利得税の基本的な税率は10%または20%であり(2021年時点)、一定額までは年間免除があります。

上記のように主要国を国際比較した場合、所得税、株式譲渡課税、どの部分と比較しても、日本は一番税率が高い国なのです。

スタートアップ企業を増やすとともに、事業再編・事業承継・事業再建など、日本企業の新陳代謝を促すためにも、国税庁には税率の再検討をお願いしたいと思います。

米国ストックオプション(SO)税制に関する補足説明

SO の取得者に関する課税は、いつ(付与時・行使時・株式売却時)、どのように(所得税・キャピタルゲイン税)課税を行うか、という点が問題であります。
一般原則の下で課税が為されるとすると、
①付与時には経済価値が確定しないため、課税は発生せず、
②行使(株式取得)時に、行使価格と時価の差額(報酬が確定)に所得税が課され、
③株式売却時に、行使時の時価からの値上がり益についてキャピタルゲイン税が課されることになる。
このため、オプション取得者は、株式を売却しなければ資金が得られないにも拘わらず、②の時点では、税金を含めて支払超となる。これを回避するために、制度上、「一定の要件が満たされれば、行使時(②)の課税が株式売却時(③)まで繰り延べられ、すべての利益(株式売却価格-オプション行使価格)につきキャピタルゲイン税(所得税よりも低率)で課税する」との優遇措置が認められている。

※ ISO(Incentive Stock Option=奨励型ストックオプション:発行企業に損金算入メリットなし)

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