金融市場に混乱か?

先週、個人投資家の資金を運用している親しい友人と、向こう3か月~半年の金融市場に関するディスカッションをする機会がありました。

私はあくまでも個人的な見解として、少なくとも年内は、手元資金を多めに持っておく方が良いという話をしました。

ウクライナ情勢以外の3つの混乱要因

1. 英国債券市場の混乱
イギリス政府は、記録的な物価高(インフレ率は10%前後)への対策として、大規模な減税策とエネルギー価格の上限設定を含む、経済再生政策を打ち出しました。しかしながら、高いインフレ率が続く中、減税の原資を借入金(国債発行)で賄うという見通しは、市場から否定的に受け止められました。政府借入の増加は、長期債の価格下落やレバレッジの効いた債務連動型運用(LDI:Liability Driven Investment)の担保請求につながり、年金基金は資産の売却を余儀なくされました。

通常、債券や短期金利の市場は、0.01%単位で売買されていますので、0.1%でも大きく損益が動きます。まして、短期間で1%、2%動くと、英国債に投資している年金ファンドを中心とする債券投資家の損失は、計り知れない単位となります。

JPモルガンのアナリストは、英国の年金基金危機の中核をなす債務連動型運用(LDI)に関連するデリバティブポジションの時価評価損は、8月初旬以降、総額1250億~1500億ポンド(約25兆円)に上る可能性があると発表しました。

2. 米国住宅ローン金利の急上昇

米国の住宅ローン金利は、年初から約2倍になりました。
例えば、3000万円の住宅ローン残高がある場合、金利3.5%であれば、単純計算すると年105万円の支払い(毎月87,500円の利払い)ですが、金利7%であれば年間210万円(毎月175,000円の利払い)となります。
インフレによる物価上昇に加え、住宅ローンの利払い負担急増は、住宅ローンをかかえる米国の国民には大きな家計負担となっていることは間違いなさそうです。

参考:
https://www.reuters.com/markets/us/us-mortgage-interest-rates-rise-highest-level-since-2006-2022-10-12/

3. クレディ・スイスの信用リスク

クレディ・スイスの最近のトラブルとしては、2020年に前CEOのティジャン・ティアムが辞任に追い込まれたスパイ疑惑や、2021年に破綻した米ヘッジファンド「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」への55億米ドルの損失が挙げられます。

現在、3大格付け機関(ムーディーズ、S&P、フィッチ)すべてが、クレディ・スイスに対してネガティブな見通しを示しています。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドが急拡大=クレディ・スイスの信用格付けが脅かされていることを示唆しています。さらに、上記、1と2で示したような、投資銀行にとってはネガティブな金融環境の中で、資本を増強し、信用を回復するのは容易ではないと思われます。
現在、クレディ・スイスは、資産売却に動いており、株式投資家にとっては、増資のような大きな希薄化を伴わないので、望ましい選択肢です。しかし、市場は、クレディ・スイスは資産売却を強いられている売り手と見なしており、バーゲン価格で資産を売却しなければならないだろうというのが一般的な市場参加者の見方です。

支払い不能に陥ったリーマンブラザーズの経営破綻=リーマンショックを思い出す方も多いかもしれませんが、クレディ・スイスは支払い不能に陥っているわけではないので、同じ状況ではありませんが、世界の金融市場を混乱させるだけの規模の金融機関であることは間違いありませんので、スイス国立銀行を含めた動向に注視が必要です。

日本のメディアは、国際的なニュースはウクライナ情勢が大半を占めており、本日取り上げたマーケットニュースはあまり注目されていません。しかしながら、金融はグローバルマーケットで、ひとたび問題が大きくなると、日本市場に相当なインパクトがあることは認識しておきましょう。

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