先週7月28日、”米シリコンバレーに今後5年で起業家1000人規模派遣へ (経産省)”というニュースが入りました。
そうか、1000人か、なかなか踏み込んだ人数だなと思いきや、日経新聞の記事によると、内容は”日本の起業家や大企業の新規事業の担当者など希望者から毎年20人、1週間の研修プログラムを受けてもらう”ことで、大変がっかりしました。
私は、勤務していた富士銀行から事前出張含め、半年弱サンフランシスコのベンチャーキャピタルCrosslink Capital(https://www.crosslinkcapital.com/)に出向させてもらいましたが、正直1週間では本当に観光で終わってしまうと思います。
起業家を育成する目的で、シリコンバレーへ人材を派遣する場合、大別して2つのルートがあると考えます。
1. 起業家がフォーカスしている業界に属する会社で勤務する。
2. 投資家の立場でスタートアップ企業を学ぶため、ベンチャーキャピタルで勤務する。
私は2の方でしたが、2のメリットは、ベンチャーキャピタルには毎日、起業家がプレゼンに来社するので、多くのプレゼンを受け、ディスカッションできる機会に恵まれます。
ただし、いわゆるベンチャーキャピタル業務の基礎の基礎だけでも下記の内容があります。
私がCrosslink Capitalで勤務した初日に担当者が私に、ベンチャーキャピタルの業務を簡単にレクチャーするために作成してくれたメモです。
大変参考になると思いますので、掲載します。

1. ディールソーシング(案件開拓)
・通常、パートナーやアソシエイツの人的ネットワークから初回、2回目のプレゼンの会社が1日数社訪問してきます。
・ミーティングは概ね90分で、45分プレゼン、45分質疑応答でした。また、ミーティングが終わると、ミーティング参加者で、次ぎのステップに進めるか、否かのミーティングを15~30分行うので、1社のプレゼンミーティングに参加すると、約2時間はかかります。
・人的ネットワーク以外ですと、テクノロジー業界や投資銀行が主催するカンファレンスで、気になる会社のプレゼンを聞き、プレゼン後、名刺交換して、コンタクトすることもありました。
2. デューディリジェンス(詳細調査、以下「DD」)
・当時、Crosslink Capitalは毎週月曜が全体会議の日でしたので、概ね昼過ぎに全体会議が終わると、パートナー全員が揃っている月曜の午後は、ディールが終盤の会社経営者がよく来社して、いわゆるマネジメントDD(経営者面談)をしていました。
・カスタマーDD:投資する会社の顧客への調査で、米国は広いので、電話会議でDDを実施します。投資検討している会社の製品を採用した会社、何故その会社の製品を採用したのか?採用しなかった会社へのヒアリングでは、何故その製品を採用しなかったのか?利便性なのか、価格なのか、サポート体制なのか、様々な質問を矢継ぎ早にしていきます。なぜなら、相手はDDに協力しているだけなので、あまり時間を取ってもらうことができないからです。
3. ディールプロセス(契約及び企業価値評価と交渉)
・取締役派遣を含む投資契約と日本でいう資本政策がメインとなります。
4. ポートフォリオマネジメント(投資先管理)
・シリコンバレーはサンフランシスコから60~70キロくらいの距離なので、道が空いていれば1時間で行ける距離ですが、朝の通勤渋滞にはまると1時間半くらいかかってしまうので、シリコンバレーの投資先に行く時は、朝6時前には出発していた記憶があります。
・投資先管理は、リードインベスターか否かで、投資先にかける時間も変わってきます。リード案件は、取締役会出席、人材採用、専門家の派遣など会社が不足している部分を徹底的に補います。一方、他社リードの投資先には、事業の進捗を確認する程度です。
5. その他
ベンチャーキャピタル業界の専門サイトはよく見ていました。私は、今でもCB Insightsはメルマガ購読して、テクノロジートレンドをウォッチするようにしています。
話を元に戻しますが、要するに1週間の研修で、何を学べるか?という疑問です。
もし、ベンチャーキャピタルではなく、前述1のスタートアップ企業に行った場合、企業の成長ステージによってメインの課題は大きく異なりますが、販売モデル(直販か、代理店か)、誰がその責任者をして、誰が補佐するのか?現行の顧客、将来の顧客、スイッチングコスト、販売ルート、テクノロジーのトレンドと自社の強み、弱み、可能性とリスク、競合分析等、やるべきことは尽きることがないくらいあるので、1週間で何を学ぶのかをしっかりフォーカスしないと、本当に1000人の旅行者を派遣しただけで終わってしまう気がします。
当社からの提言:同じ予算を使うのであれば、1週間を50週間(約1年)に延長する一方、人数を1000÷50=20人とする。
毎年4人×5年=20人とすべきと考えます。
この20人がシリコンバレーの神髄を日本へ持ち帰れば、10年後、デカコーン(企業評価1.3兆円以上の未上場企業)が出現する可能性が高まると思います。
