テクノロジーは既得権益を排除する①

7月8日付で、政府が新型コロナウィルス対策として、酒類の提供停止の要請を守らない飲食店に対し、金融機関に働きかけを要請したことに世論が大反発をし、結果、政府はこの要請を撤回しました。
金融機関の機能は極論すると、お金を預ける人、会社(預金者)とお金を借りたい人や会社(債務者)の仲介者に過ぎません。また、仲介者の収益源は、金融機関にとって資金調達である預金と資金運用である貸金の金利(利息)の差(利ザヤといいます)でしたが、長引く超低金利政策や低成長経済による資金需要の減退により、利ザヤで収益を稼ぐことができなくなりました。更に、手数料収益の根幹である送金手数料に相当大きなダメージを与えそうなサービスが海外で急速に普及し始めています。
本日は金融仲介機能(銀行・証券)を安価でサービス提供する注目企業を各業界から1社ずつ紹介しておきます。

銀行業界への刺客

ワイズ https://wise.com/
英国国際送金フィンテックサービス。今月7日、ロンドン証券取引所に株式を公開し、時価総額は79億ポンド(約1兆2100億円)となった。テクノロジー企業の新規上場としてはロンドン証券取引所で過去最大を記録しました。
英国は金融当局がフィンテックサービス普及を推進していることもあり、スマホアプリに特化したデジタル銀行が台頭し、既存の高コスト体質の銀行は苦境に立たされています。英国は社会インフラを作らせたら、天才的な国です。英語の言語スタンダード化、ケイマン諸島、バミューダ島などのタックスヘイブン、アジア最大の金融都市香港、スポーツも同様で、英国人がほとんど出場しないのに世界的なテニス選手権、ウィンブルドン大会。モータースポーツの最高峰フォーミュラ1。プレミアリーグも世界最高峰のサッカープラットフォームです。英国は金融、情報、スポーツあらゆる面で世界中の資金を集めるのが得意な国です。英国は恐らく、金融業界に関しては、既存の銀行の役割は終わり、デジタル社会に対応した、もしくは特化した銀行こそがこれからの銀行像だと確信しているのでしょう。英国発で国境なき金融のプラットフォームを作り、新たな金融グローバルスタンダードを作る。いかにも英国らしい発想だと思います。
ワイズは既存の銀行に比べて、どのくらい節約できるかをホームページ上で公開していますので、是非ご覧ください。
世界銀行のレポートでは、G20各国の平均送金手数料は送金額の6.38%。
https://remittanceprices.worldbank.org/en
一方、ワイズの平均手数料は送金額の0.7%です。
また、ワイズは銀行の手数料がなぜ割高なのかをグラフで説明しています。
https://wise.com/community/radical-transparency-us

世界銀行の国際送金レポートによると、200ドルを送金した場合、送金金額の何パーセントが送金手数料なのかという調査では、南アフリカに次ぎ、日本はワースト2位の10.5%という結果が出ています。
日本に黒船が来る日は、そう遠くはないかも知れません。

出所:世界銀行海外送金レポート
https://remittanceprices.worldbank.org/sites/default/files/rpw_main_report_and_annex_q121_final.pdf

証券業界への刺客

ロビンフッド・マーケッツ https://robinhood.com/us/en/
株式や上場投資信託(ETF)、オプション、暗号通貨の売買手数料を無制限かつ無料で売買できるアプリを提供しています。今月7月1日、新規株式公開(IPO)に向けた目論見書を米証券取引委員会(SEC)に提出しました。2021年1~3月期の売上高は5億2220万ドル(約580億円)となり、前年同期比4倍に急増していることが判明。また、IPOの内容も驚くべき計画です。通常、主幹事証券会社が新規公開株を上場直前に販売する相手は、主幹事証券のお得意様の機関投資家をはじめとするいわゆるプロ投資家です。よって、一般の個人投資家は株式市場で売買開始後に買わなくてはなりません。新規公開株の初値は公開価格を大きく上回るのが通例であり、一般の個人投資家はIPOの前に上場予定株式を購入できる機関投資家に比べて、常に不利な状況にありました。しかし、ロビンフッドは新規公開株のうち最大35%を自社の利用者(一般個人投資家)に割り当てる計画です。
12世紀のイングランド、国民を苦しめる悪政の限りを尽くす愚かな国王に、国民を守るために国王に反旗を翻し、立ち上がった弓矢の名手が、この社名の由来のロビンフッドでした。金融業界のロビンフッドになれるのか、注目したい会社です。

次週はテクノロジーカンパニーが続々と金融サービスに参入し始めている現状と5年後の金融業界図について語ってみたいと思います。

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