SPACとは

今週は最近、経済記事でよく見かけるようになったSPAC(Special Purpose Acquisition Company)=特別目的買収会社について解説します。

金融取引では会計処理を明確にする(対象とする事業だけ行う)ため、SPC(Special Purpose Company)と呼ばれるペーパーカンパニーを使うケースがよくありますが、SPACは企業買収に限定したSPCです。
ペーパーカンパニーは文字通り、登記だけした会社であり、海外ではシェルカンパニー(貝殻=中身がない)とも呼ばれ、事業を開始するまでは、その会社自体に事業実態はありません。

SPACの仕組みを簡単に説明します

① スポンサーが資金を提供し、シェルカンパニーを設立します。スポンサーは買収完了時に一定の株式持分(通常は20%の持分)を取得できる仕組みとなっています。

② シェルカンパニーは米国証券取引委員会(SEC)にIPOを申請し、一般株主から追加の資金を調達します。シェルには経営陣がいますが、SPACの唯一の目的は買収対象となる未公開企業を見つけることなので、通常は業務を行いません。

③ ターゲット企業(未公開企業)が見つかると、株主はその買収取引を承認します。買収後は、ターゲット企業がシェルカンパニーに買収・合併されます。未公開企業であるターゲット企業は、公開企業であるシェルカンパニーに合併されるため、結果公開企業となります。また、シェルカンパニーは実態のあるターゲット企業を買収し、合併することで、初めて中身(事業実態)のある会社となります。

④ IPO によって調達した資金は信託口座に入れられ、通常2年以内に企業を買収するために使用されます。もし、SPACの株主が提案された合併を承認しないか、SPACの期間が満了した場合は、IPOで調達した資金を投資家に返還しなければなりません。

SPACの市場規模

出所:https://www.spacresearch.com/newsletter?date=2021-01-04

昨年SPACの上場による資金調達額は約800億ドル(8兆円)に急増しました。
日本国内の全証券市場のIPOによる資金調達額が886億円(※)なので、米国はSPAC上場のみで、日本のIPO市場の約100倍の資金を調達したことになります。

※出所:https://www.tokyoipo.com/column/tokyoipo_2020_IPOreport.pdf

なぜSPACを利用するのか?
SPACに登場する人物は主に3人です。
最初に資金を出すスポンサー
IPOを目指す未上場企業
一般投資家

SPACは三者の思惑が一致するからこそ、利用が急増したスキームです。
では、3人の思惑を見ていきましょう。

スポンサー

SPACによるIPOが増えているのは、市場の価格変動リスクが大きく影響しています。従来のIPOプロセスは長期間にわたるため、市場の変動によって投資した企業の評価が大きく変わる可能性があります。また、IPO予備軍をサポートしている投資家(ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンド)は支援先の企業が不測の事態や不景気でも乗り切れるよう手元準備資金を潤沢に用意する必要があります。SPAC IPOで、短期間でIPOできれば、用意しておく手元準備資金を新たな投資に振り向けることができるので、スポンサーのメリットは大きいと言えます。

未上場企業

IPOのプロセスは極めて煩雑な上、IPOの株価価格決定に関しても、引受証券会社(主幹事証券)や機関投資家との厄介な交渉が続き、基本的には価格を下げる方向の圧力を強く受けます。(証券会社としては安い方が売りやすいという当たり前の話)また、折角何年もかけてIPOの準備をしたとしても、市場環境が悪ければ、延期や取りやめも検討しなくてはならなくなります。また、通常のIPOでは詳細な事業計画を何度も練り直す必要がありますが、SPACは赤字であっても、将来性を見出してもらえれば、IPOできるので、未公開企業にとっても魅力的な方法となりました。

一般投資家

上場時点は実態のないシェルカンパニーですが、スポンサーに著名投資家がいれば、大きなリターンを得られるチャンスだと思うのは当然です。米国はベンチャーキャピタルの資金が潤沢なため、優良な未公開企業の投資案件は、ほぼプロの投資家であるベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドが牛耳っている状態です。すなわち、優良な未公開企業投資案件へ投資することはほぼ不可能です。一方、SPACは上場時点の株式売り出しで、一般投資家が購入できる上、もし、2年間で買収案件が見つからなければ、信託口座に預けられた資金は投資家に返還されるので、一般投資家にとっては、リスクを抑えつつハイリターンを狙える仕組みとなっています。もちろん、株価である以上、株価が急落する案件はありますが、ハイリターンを狙う以上、ハイリスクはつきものなので、投資家としては、選択肢が増えることが歓迎されていると言えます。

次回は、SPACは日本では必要か?という点から、未公開企業に対する米国と日本の投資環境の違いを解説していきたいと思います。

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