2021テクノロジーが変えようとしていること③

テクノロジーがもたらす脅威

先週はこれまで商業や流通で大きな変革をもたらしたテクノロジーが、次ぎは何を変えるか?という問いに答える形で、Bitcoinを取り上げ、テクノロジーが変える次のターゲットは金融であることを解説してきました。
Bitcoinは新たな通貨の可能性を示していましたが、直接銀行の経営を揺るがすには及ばないようにも思えます。しかしながら、2019年フェイスブックが発行すると公表したデジタル通貨「Libra(リブラ)」は、世界の金融システムを大きく破壊する可能性があるとの懸念から、世界の政策当局が圧力を強めた結果、当初の構想からは大きく形を変えざるを得なくなり(規模縮小)、昨年12月、名称はLibraからDiemへ変更されました。

では、なぜ世界中の金融当局が、1企業が推進するプロジェクトを潰す必要があったのか?それにはいくつかの脅威があったことは言うまでもありません。

通貨バスケットの脅威

Bitcoinとの大きな違いの1つが、Libraは価格変動を抑え、決済にフォーカスしたことです。価格の根拠を、米ドルをはじめとする主要通貨レートを加重平均等で算出した価格とすることで、価格変動を抑え、安定的な通貨として利用させようとした点で、Bitcoinとは大きく異なる特徴を持っています。要するに見た目上、主要通貨をまとめた価格決定となるため、あたかも主要通貨の上に位置するようなイメージとなります。この通貨バスケットは、各国が様々な規制を設けることで、送金手数料や為替スプレッドによる利益を自国に留めてきたことが、一気に崩されかねない方式なので、世界の金融当局が猛烈に反発したことは容易に想像できます。もちろん、表向きの反対理由は、金融セキュリティ、投資家保護、アンチマネーロンダリング法に関する重要なリスクに対処できていない点でしたが。

KYC(Know Your Customer)の脅威

Libraを利用するには、本人確認書類としてパスワードをはじめとするIDを登録する必要があると公表されていました。これは、KYC(Know Your Customer=顧客を知ること)手続き上、最も初歩的かつ基本的なことですが、これこそがFacebookの強みと融合した際、爆発的な普及につながると感じました。読者の皆様の中で、ここ数年海外の銀行口座を非居住者として開設したことがある方はご存知だと思いますが、銀行のKYC手続き(特に非居住者)は年々厳しさを増していました。例えば、日本国内の銀行で口座開設をする時は、KYCとしてマイナンバーカードや運転免許証を提示します。しかしながら、海外の銀行ではより厳しい手続きとなっており、通常POI(Proof of ID)、POA(Proof of Address)が必要となります。これは、ID=パスポートを自分が提出するのではなく、公証人役場、弁護士、行政書士等の第三者にパスポートを提示し、英文でこのパスポートは本人のものであることを証明してもらいます。POAは住所証明なので、公共料金の請求書や銀行からの送付物を第三者に提示し、同様に証明書を発行してもらいます。費用も1通1万円近くかかります。
一方、Facebookはどうでしょうか?もちろん、偽アカウントが存在することは事実ですが、AIが日々進化するとともに、同社は35,000人以上の人員が偽情報対策に従事しており、先週3月22日、2020年10月~12月の期間で、13億件以上の偽アカウントを無効にしたと発表しました。

https://about.fb.com/news/2021/03/how-were-tackling-misinformation-across-our-apps/

Facebookはサービスの性質上、サービスそのものがKYCと言えます。私も、Facebookのいくつかのグループに参加しています。例えば、以前勤務していた銀行の同じ大学出身者で形成するグループがあります。このグループには、同じ大学を卒業し、同じ銀行に勤務した人しかいません。なぜならば、招待されない人はこのグループには参加できないので、第三者KYCが勝手に働いています。無数のアルゴリズムが24時間365日、働いているFacebookはKYCを最も得意とする会社と言えるかもしれません。

プラットフォーマーとしての脅威

Facebookのユーザー数は2020年12月末、約28億人となっています。

https://market.us/statistics/social-media/facebook/

「お金を新たに作り直して世界経済を変革し、世界中の人々がより良い生活を送れるようにする」というザッカーバーグ氏の壮大なビジョンは、あまりにも通貨や金融機関に対するインパクトが大きかったため、今日現在では実現していません。
しかしながら、28億人以上のユーザーを抱え、巨大なネットワークを持つFacebookが高速で安定したデジタル通貨を作り、世界中の金融アクセスを改善したいと考えていることは変わりありません。私はGAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)の中では、将来性という点ではFacebookが最下位かなと考えていた時期がありましたが、このLibra構想(=金融事業進出)を知り、「あっ! KYCの簡略化ができるかもしれない」と思った瞬間、金融再構築という観点からはGAFAMで最も将来性ある会社かもしれないと感じました。

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