時流を先取りする大型M&A
グローバルM&A
2000年以降のM&Aから読み取る、今後のビジネストレンド 3つのケース編
2000年以降のM&Aで、私が特に印象に残る大型M&A3件を紹介します。
今回はディールの詳細ではなく、背景やスケールを読者の皆様に感じてもらいたいので、金額はディールが行われた時点の為替レートではなく、目安として1USドル=100円として記述しますこと、ご了承ください。
ケース① eBayによるSkype買収
2005年9月、インターネットオークション最大手のeBayがオンライン通話サービスSkypeを26億ドル(2,600億円)で買収しました。買収の前年度のSkypeの売上は6,225千ドル、約6.2億円、利益は11億円の赤字。M&Aが成立した2005年は急成長し、2005年6月末、半期終了時点で、売上は約23億円、純利益は8億円の赤字でした。
Skypeの先進性は、従来通話はお互いの電話番号を知らなければ通話できませんでしたが、Voice over IPという技術、まさにインターネットプロトコルに音声と乗せるというサービスにより、お互いの電話番号ではなく、ユーザ同士で通話をするサービスをいち早く実用化した点です。今では、LINE通話をはじめ、Viber,WhatApp等多くのSNSでインターネット通話が当たり前になりましたが、今から20年近く前にインターネット通話を実現したことは、まさに先駆者であったと言えるでしょう。
このM&A自体は事業シナジーという点からは失敗に終わり、金銭的にも2009年Skype株式の約70%を19億ドル(1,900億円)で売却し、万事休すと思われましたが、2011年5月、マイクロソフトがSkypeを85億ドル(8500億円)で買収することが発表され、Skypeの約30%の株式を保有していたeBayは約25億ドル(2,500億円)を手にしました。結果、2009年の売却19億ドル(1,900億円)と合算すれば、投資回収額は44億ドル(4,400億円)となり、当初の投資額を1.7倍にし、売却益18億ドル(1800億円)を計上しました。失敗例として、ケーススタディに使われる事例ですが、本業で1,800億円を稼ぐことができる会社が少ないだけに、私は経営者としては、合格点のディールであったのではないかと考えています。
ケース② Google によるYouTube買収
2006年の買収と言えば、やはりGoogle によるYouTube買収です。YouTubeは2005年2月に創業し、創業後約1年半で、広告収入は1500万ドル(15億円)でしたが、Google はインターネットがテキストから動画へと広がりを見せる動きをいち早く察知し、買収の競合であったYahooを押しのけ、設立して2年にも満たないYouTubeを16.5億ドル(1,650億円)で買収を完了させた点は見事でした。また、現在ではYouTubeの広告収入は、2019年に151億ドル(1.5兆円)を計上し、2020年は第3四半期までで、129億ドル(1.3兆円)を計上し、前年比大幅増収は間違いない状況です。
では、買収の当事者Googleがどのような考えで、YouTubeを買収したのか?を語った当時のCEOエリック・シュミットのインタビューを抜粋します。
“確かに、YouTubeは収益がほとんどない会社でしたが、ユーザーの利用で急速に成長し、Googleが持っていた製品であるGoogle Videoよりもはるかに早いスピードで成長していました。そして、彼らは売却することを我々に示していましたが、私たちは、Googleが誰であるかという理由で、YouTubeの価値をはるかに上回る価格を支払う競合(Yahoo?)のオファーがあるだろうと考えていました。取引の力学では、覚えておいてください、価格は私の判断や財務モデルや割引キャッシュフローによって設定されているわけではありません。人々が何を支払うかによって設定されるのです。そして最終的には、16.5億ドルには、早く行動を起こし、私たちがYouTubeにおけるユーザーの成功に参加できるようにするためのプレミアムが含まれていると結論づけました。”
ケース③ FacebookによるInstagram買収
Instagramは2010年設立、売上はほぼゼロ、社員13名の会社でした。ただし、ユーザー数は2011年6月が500万人、3か月後の9月には倍増し、1000万人、2012年4月には5000万人に到達し、まさに急成長をしていたスタートアップ企業でした。
Instagramは更なる成長を見込み、セコイアキャピタルをはじめ、有力ベンチャーキャピタルから2012年4月5日(木)に、企業価値5億ドル(500億円)で総額5000万ドル(50億円)を調達しました。
しかし、週末をはさみ翌週4月9日(月)FacebookがInstagramを10億ドル(1000億円)で買収したと発表します。先週5日(木)に投資額を送金したベンチャーキャピタルは4日間で資金を倍にすることができました。
なぜ、Facebookはこれほど買収を急いだのか?もちろん、写真共有の市場は爆発的に広がることを確信し、脅威に感じていたからでしょう。
マーク・ザッカーバーグは、買収後「何年もの間、私たちは友人や家族と写真を共有するための最高の体験を構築することに焦点を当ててきました。今回、私たちはInstagramのチームとさらに緊密に連携して、あなたの興味に基づいて美しいモバイル写真を共有するための最高の体験を提供することができるようになります。」とコメントしていますが、彼の本音は買収の2か月前、FacebookのCFOデビット・エバ―スマンに宛てたメール内容ではないでしょうか?
「InstagramやPathの事業はまだ始まったばかりだが、ネットワークは確立されており、ブランドはすでに意味のあるものであり、もしそれらが大規模に成長すれば、我々にとって非常に破壊的なものになるだろう」
- 本稿で紹介した3つのディールは全て
買手は売上規模の100倍以上の価格で対象企業を買収しています。 - ここには、財務データやDCFなどの企業評価基準もありません。また、買収が実行された年を思い返してください。2012年にInstagramを知っていた方は、どのくらいいるでしょうか?映えという言葉がはやり始めたのは、FacebookがInstagramを買収した5年後の2017年です。このような大型M&Aは、必ずトレンドの先取りをしています。

米国初の新しいサービスに関する大型のM&Aには注目していきましょう。
