過去のコラムでは、テクノロジーが既得権益を排除したり、既存の大手と言われるプレーヤーがテクノロジーカンパニーに事業を侵食されたりした例を数多く挙げてきたので、「お前は銀行で仕事のノウハウとスキルを身に付けたにもかかわらず、銀行に将来性が無いようなコラムと書くとは、けしからん!!」と諸先輩方にお叱りを受けそうなので、本日はやり方によっては強みにできる例を挙げたいと思います。
(単位:億円)

さて、どの会社でしょうか?
ヒントは事業Aです。
テクノロジーに伴うサービスで、主力事業Aの売上が17年で3分の1になった会社です。しかしながら、この会社は、見事に事業モデルチェンジに成功し、営業利益ベースでは遜色ない数字を残しています。
もうおわかりいただけたでしょうか?
会社名は ”富士フイルムホールディングス株式会社(東証コード4901、以下「富士フイルム」)”です。
事業Aはイメージング事業で、写真フィルム、デジカメプリント等です。
写真フィルムのトップメーカーだった富士フイルムは、1990年代にデジタルカメラが普及し始めると、将来的に写真フィルム販売が大幅に落ち込むことを認識していました。また、当時最大のライバル会社であったコダカラ―で有名なコダックは1970年代にデジタルカメラのコア技術を開発した会社で、コダックも富士フイルム同様、写真フィルムの販売が減少することは認識していました。
では、なぜコダックは倒産し、富士フイルムは今でも国際的な優良企業としての地位を確立できているのか?
端的に言いますと、コダックは、テクノロジーの変化に伴う自社の置かれた市場の脅威を認識していたものの、株主主権(「会社は株主のものである」という考え方)に基づいて利益最大化を追求し、現状維持をしながら、事業効率を高め、コスト削減に取り組んでいました。また、豊富な手元資金の主な使い道は、自社株購入でした。
一方、富士フイルムは、株主主権に基づく足元の利益最大化ではなく、会社として生き残るために、テクノロジーによってもたらされる市場の変化に適合することを第一と考え、自社が保有する技術や知的財産を洗い出し、自社の強みを活かせる事業を探し出しました。コダックと違い、手元資金の主な使い道は研究開発でした。フィルムの主原料はコラーゲンで、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化物質です。写真フィルムの劣化を防ぐコラーゲンがASTALIFTアスタリフトをはじめとするアンチエイジング化粧品開発に大きく貢献したことは言うまでもありません。
⇒現在の稼ぎ頭、事業Cがヘルスケア、メディカル事業です。
国際送金ワイズ(英国、時価総額約1.1兆円)CEO、クリスト・カーマン氏の起業の動機は、大手コンサルティング会社デロイト勤務時代、「変わるべきだが変わろうとしない銀行」に苛立ったこと。
苛立ちを自社で変換し、新規事業にするか?苛立った社員を旅立たせ、起業に向かわせるのか?
テクノロジーは様々な業界で、この質問を投げかけています。
一見、劣勢に立たされている会社も、俯瞰して自社の強みを探し出せば、必ず再生、再興できる道があります。もしかすると、外部の人や他社の方がよく見えていることもあります。
私が尊敬する銀行勤務時代の上司のことば:
「俺たちが石だと思っている情報は、見方を変えればダイヤモンド級の情報かもしれないぞ」
