ポール・チューダー・ジョーンズ(以下「ジョーンズ」)という投資家、ヘッジファンドマネージャーをご存知でしょうか?
私のように、1990年代に市場部門に所属し、トレーダーの端くれとして仕事をした者からすれば、まさに憧れの象徴でありました。
ジョーンズが市場に名を知らしめたのは、1987年の米国株式暴落ブラックマンデーでした。米国の株式市場でのクラッシュに賭けた彼は、手数料を差し引いた後、125.9%のリターンをたたき出し、推定1億ドルを稼ぎました。
1990年、日本の株式バブルが崩壊したとき、日本の株式市場の空売りと日経平均先物の売りポジションで、87.4%のリターンを上げました。
私から見ると、ジョーンズは中央銀行の政策と市場の歪を的確に捉えて、歪を是正する方向にポジションを張る投資家でした。よって、2000年以降、各国の中央銀行が為替相場や市場金利を上手く操作していたため、彼の名前を見ることはほとんど無くなりました。
しかしながら、コロナ対策のため、各国の政府、中央銀行が市場に大量の資金投下を実施したことで、またジョーンズは動き始めました。
2017年に出版された アンソニー・ロビンズ著 世界のエリート投資家は何を見て動くのか(原題:Tony Robbins Money book)でアンソニー・ロビンズとジョーンズは、投資の極意について、このような質疑応答をしています。(以下、同書より抜粋)
ジョーンズ:「主流トレンド」に必ず乗ることだ
ロビンズ:どのようにしてトレンドだと決めるのですか?
ジョーンズ:私が見るすべての私の測定基準は、終値の200日移動平均だ。(途中省略)原則的に200日移動平均線より価格が下がった株は売り払うべきだ。(=価格が200日移動平均線より上にあれば、買いポジションをキープ)
一方、今月6月14日月曜の「Squawk Box」のインタビューでは、ジョーンズはビットコインに対する好意的な見方を繰り返し、「ポートフォリオの多様化」と「富の物語」と呼んでいます。また、長年のトレーダーであるジョーンズは、経済全体と比較した株式市場の評価を考えると不安になると付け加えました。
「私は、金に5%、ビットコインに5%、現金に5%、コモディティに5%を投資したいと考えています。現時点では、残りの80%をどうするかは、FRBの動きを見るまでわかりません」とジョーンズは言います。

上記グラフはビットコインの過去2年(2019年7月~2021年6月)の値動きを表したチャートです。
・ジョーンズは200日移動平均線の下ではポジションを持たないと言っていました。
・5月20日以降、ビットコインは200日移動平均線の下にあるにもかかわらず、6月14日時点でも、彼は全体ポートフォリオの5%をビットコインに投資すると言っています。(昨年末時点は2%でした)
ジョーンズが長年続けてきた自分の投資方針に逆らってまで投資する理由は何なのか?
表向きは、政府、中央銀行が供給した過剰流動性(資金がじゃぶじゃぶの状態)がインフレを引き起こすので、そのヘッジとしてビットコインを保有すると説明しています。本音としては、200日移動平均線を下回っていても「主流トレンド」には間違いないと判断しているのかもしれません。
参考までに、過去5年のビットコインのチャートを掲載しておきます。

