政治家の投資力

“一般的には、「貯蓄」とはお金を蓄えることで、銀行の預金などがこれに当たります。一方、「投資」とは利益を見込んでお金を出すことで、株式や投資信託などの購入がこの「投資」に当たります。”
(金融庁HP https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.htmlより抜粋)

政治家の投資とは、「財政投資(出動)を通じていかに国内総生産を引き上げるか」ではないでしょうか?
もちろん、財政を出動するには法律を作り、国会で承認され、お金をしかるべき場所(個人、法人、団体等)へ届ける必要があります。

下記は米国と日本の実質GDP(※)のグラフです。

米国政府公式ウェブサイトより当社作成
https://apps.bea.gov/iTable/iTable.cfm?reqid=19&step=2#reqid=19&step=2&isuri=1&1921=survey

※GDP:Gross(総計)Domestic(国内)Product(産み出したもの)略です。ざっくりいうと一定期間(今回は1~3月の3カ月間)で、どれくらい国が儲けたかという指標です。
名目GDPや実質GDPの違いに関する説明は、ネット検索すると、多数出てきますので、ここでは割愛します。また、経済用語を理解するためのオススメは小学生向けのサイトで、わかりやすく説明しているものがたくさんあります。

米国商務省が4月29日に発表した2021年第1四半期(1~3月)の実質GDPの水準は19兆876億ドルとなり、新型コロナウィルス感染拡大前の水準(2019年10~12月期19兆2,540億ドル)にほぼ回復しました。

5月18日、内閣府国民経済計算部が公表した2021年第1四半期(1-3月)の実質GDPは前期対比1.3%減少して534.3兆円、更に4月25日から東京、大阪、兵庫、京都、更に5月には10都道府県が緊急事態宣言の対象となっていることを考慮しますと、第2四半期(4-6月)のGDPの落ち込みは避けられそうもありません。

毎日のように多数の感染者、死者を出していた米国と米国に比べ感染者数、死者数とも抑えられていた日本が、なぜ経済回復で大きな差が出たのか?

米国は今からちょうど1年前の昨年2020年5月、新型コロナウィルスのワクチン開発・生産・供給を加速させる「Operation Warp Speed(ワープ・スピード作戦)」(以下OWS)を開始しました。
OWSは政府機関ではなく、民間企業と、国防総省、HHS(保健福祉省)、FDA(食品医薬品局)、CDC(疾病対策センター) NIH(米国立衛生研究所)、BARDA(米生物医学先端研究開発局)に加え、農務省、エネルギー省、退役軍人省、などの米国政府機関を調整するための、いわゆる官僚主義を撤廃する横断的な仕組みです。新型コロナウィルスが現実の脅威であることを否定していた当時のトランプ前大統領は、ウイルス蔓延を抑制するための国家戦略を打ち出していませんでしたが、大きな方針転換を図ったのがこのOWSと言えます。
OWSでは、4大ワクチン・メーカーの一角である英医薬品大手グラクソ・スミスクラインのワクチン部門トップだったモンセフ・スラウイ博士が首席顧問として就任し、COO(最高執行責任者)にはロジスティックス(物流管理)の専門家であるギュスターブ・ぺルナ陸軍大将が任命されました。また、保健福祉省では600人以上、国防総省では90人以上の人員がOWSに参加しました。
お金の面では、OWS発足時に「コロナウィルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)」における補正予算で、100億ドル(約1兆700億円)が確保され、最終的には180億ドル(約2兆円)をワクチン開発、製造、物流に投下しました。

下記グラフはワクチン開発投資先と金額です。

(U.S.Department of Health and Human Serviceより当社作成)

人口は日本の3倍弱の3.3億人、国土が日本の26倍ある米国で迅速にワクチン接種を実現できた要因は、ワクチン開発、製造など民間企業が強い部分には資金を投じ、製造拠点から現場へいかに早くワクチンを届けるかを、指揮命令系統が明確かつ多様な物流手段を保有する陸軍物流部隊に委任した点ではないでしょうか?もちろん、関係する省、局全てを巻き込んだ横断的な仕組みを作った点も大いに評価される点でしょう。また、見逃せない点としてはワクチンを届けるサプライチェーンにも配慮し、ワクチンを入れる瓶メーカーにも資金が投下された点です。
とかく新型コロナウィルスへの対応では批判されることが多かったトランプ前大統領ですが、GDP落ち込み分1.7兆ドル(約190兆円)を早期に取り返すために180億ドル(約2兆円)を投資したと考えれば、政治家としては十分役割を果たしたと言えますし、彼のビジネスセンスは健在だったのではないでしょうか?

一方、日本は自国でワクチン開発できず、輸入に頼り、輸入されたワクチンを現場へどのように迅速に配布するかを明確に決められず、昨年と変わらない経済活動を止める緊急事態宣言を出して、「お願い」と「要請」ばかりが聞こえます。これでは、国民の不満が募るのは当然と言えます。昨年は経済活動を停止した部分を補助金・給付金=財政出動でカバーしようとする意図が見られました。もちろん、根本的な解決ではなく現象面への対処でしたが、GDPを一時的に下支えするという点では、やらないよりはずっと良い政策です。ただし、根本的な解決に賭けるのであれば、ワクチン接種と集団免疫しか打つ手はなかったはずです。友好国である米国に対し、OWSに日本から人材を派遣し、ワクチンを製造拠点から接種の現場までいかに届けられるかを体験してもらう方法もあったのではないでしょうか?
残念ながら、前述した米国のOWSのような組織を民間企業や民間人が作ることはできません。民間人には法律を作り、国会で承認を得て、お金をしかるべき場所へ届けることができないからです。

もし、今、田中角栄がいたら。。。と考えてしまうのは私だけでしょうか?

次週は、平時と戦時を定義する大切さについてコメントしたいと思います。

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