最近、このような質問を頂くことが多いので、本日は景気が悪いのに、株価が上がるわけについて説明したいと思います。
ファイナンス解説
先ずは「実態経済」と「株式市場」の定義から入ります。
実態経済(以下「経済」)と株式市場(以下「市場」)に相関性がないことを理解するには、経済システムと市場システムを定義するのがわかりやすいので、簡単に経済と市場の2つを定義したいと思います。
経済とは、産業、商業、金融が組織化されたシステムのことです。産業=モノやサービスを作り、商業=モノやサービスを流通させ、販売し、金融=モノやサービスを作り、売る対価としてお金を得る、または逆に支払うといったフローです。経済の健全性は、雇用と生産の伸びによって測定されます。また、日本の経済システムは、公共投資を含む政府の関与と社会保障などの社会主義的な政策が混在した資本主義的システムと考えられています。
一方、市場とは、株式やその他の金融商品が売買される公開市場のことを指します。株式は、企業の所有権の一部の株式を表しています。市場は、日経平均株価(※1)やTOPIX(※2)に代表される指標で示されます。
※1
日本経済新聞社が、東京証券取引所一部に上場する約2,000銘柄のうちから、市場流動性(売買の活発さや安定度)の高い225銘柄を選定し
その株価をもとに算出する指数です。
※2
1868年1月4日の東証1部の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものです。時価総額は、加重平均で計算されるため
会社の規模を反映した指数となります。
要約すると、経済と株式市場は、関連しているとはいえ同じものではありません。
これは会社の社数からも明らかです。中小企業庁が発表している企業数は約360万社(2016年6月末時点)です。一方、株価の指標で社数が多いTOPIXでも約2000社です。割合は実に0.056%です。
では、経済と市場に相関性がないのであれば、株価が下がるという可能性だってあるはずなのに、なぜコロナ禍の昨今、株価は上がり続け、先月15日には約30年6カ月ぶりに30,000円の大台を突破したのか?という疑問がわいてきます。その要因を国際金融、投資利回り、日々の私たちの生活という3点から説明したいと思います。
① 国際金融市場:国際金融市場で最も大きな国は米国です。新型コロナウィルスが米国はじめ世界で感染拡大が始まった2020年3月、米国中央銀行の最高意思決定機関である連邦準備制理事会(以下「FRB」)は史上最大の施策を開始しました。FRBは、信用市場の流れを維持するために、銀行や地方自治体に緊急融資を発動。
同時に、金利を2019年には2.5%近くから0%近くまで引き下げると同時に、国債と住宅ローン担保証券の形で債券を購入し、保有資産を2月の4兆1600億ドルから9月までに7兆ドル以上に増やしました。
これはアメリカ経済にお金の流動性をもたらしただけでなく、安全資産である米国債が歴史的な低金利(昨年7月10 年債は0.5%台に突入、本日現在は1.4%台)となった結果、投資家の資金をリターンが極めて小さい安全資産(米国債)ではなく、より高いリターンが期待できる株式市場に向かわせました。
② 投資利回り:代表的な投資対象である国債と株式、どちらが有利な投資対象か?を判断するための計算方式であるイールドスプレッドに触れたいと思います。
イールドスプレッド=長期金利-株式益利回り
・長期金利:10年国債 0.15%
https://www.bloomberg.co.jp/markets/rates-bonds
・株式益利回り:一株当たり利益÷株価 4.18%
https://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/
本日のイールドスプレッド:0.15-4.18=-4.03
マイナス幅が大きいほど、株式投資の方が有利になりますが、何%以上かい離するとどちらかが有利という水準があるわけではありませんが、
日銀や米国の中央銀行による超低金利政策が株高をもたらしていることは間違いありません。
歴史的な低金利が株式市場への投資を促しているのは、国債や社債のような固定利率投資ではごくわずかなリターンしか得られないからです。
③ 日々の生活:外食や旅行に行けなくなったことにより、家計、消費者の預金残高が増える結果となりました。
(昨年12月21日、日銀が家計の金融資産残高が過去最高、9月末1901兆円と発表しました)国内をマクロ的に見ると、コロナで大きな打撃のあった航空業界、旅行業界、飲食業界に消費者からお金が入らなくなった一方、外食や旅行に行けなくなった消費者の手元にお金が残ったと言えます。
給付金が支給されたことも株式投資余力を増やす要因となりました。また、在宅勤務により自宅にいる時間が増えた生活スタイルの変化は新しい投資家を呼び込みました。米国では、証券業界が2020年に1000万人以上の新規口座を追加したと推定しており、Robinhood(※3)だけでも約600万人が株式売買用の新規口座を開設した模様です。
日本でも昨年12月、楽天証券は2020年3月から9カ月で100万口座増やし、累計500万口座を達成したと発表しました。
口座数増加が株高に直結するわけではありませんが、投資をするための準備ができている人が増えたという点では、見逃せない要因と思われます。
※3
米国のフィンテック企業。手数料なしで株式売買をできることが特徴。ゲーム感覚で株式売買ができることから若者に人気だが、バレッジ取引で多額の損失を出した学生が自殺するなど、投資家に対するリスク説明が不十分であることなどが指摘され、現在は米国金融当局から厳しく監視されている。
当面は、この3つの要因は続く公算が大きいので、株式投資に経験がない方も、おうち時間を活用して、
まずは、少額で実際に株式投資を始めてみてはいかがでしょうか?
