先週、10月27日付、日経新聞朝刊第二部「高校生向け特別版」の中に、“多様性の本質”(執筆:東京工業大学・北村匡平准教授)という記事の冒頭に、非常にわかりやすい文章がありましたので、紹介します。
“AIの活用が身近になってきた。単純作業の場面では、今後ますます機械の出番が増えていくだろう。科学技術の進化は、人間の価値を問い直すきっかけにもなる。”
この短い文章は、多くの示唆を含んでいます。
私は、金融機関、特に相場や投資の仕事に従事していたので、北村准教授の上記文章を株式市場や投資業務に置き換えると、このようになります。
1. 超短期(1/100秒~1週間)投資:
⇒ 投資手法:HFT=High Frequency Tradingの略で、取引手順などを組み込んだプログラムに従って高速、高頻度で自動売買を繰り返す取引。
既に機械による全自動取引が支配しています。
2. 短期(1カ月~1年)投資:
⇒ 投資手法:カタリスト投資。catalystの英単語和訳は、触媒、きっかけ、促進の働きをする人・物等。よって、カタリスト投資とは、相場を大きく動かすきっかけとなったイベントや材料で投資することを指します。
演算速度の高速化、ディープラーニングやAIの発達により、短期の予測能力が向上し、近い将来機械が支配するものと予想されます。
3.中期(2年~3年)投資:
⇒ 投資手法:バリュー投資、グロース投資。
バリュー投資は、企業の実態に比べて、株価が割安な銘柄に投資する投資手法。
PER(株価収益率、「株価÷1株あたりの利益」)やPBR(株価純資産倍率、「株価÷1株あたりの純資産」)が低い銘柄に投資します。
グロース投資は、企業の売上高や利益が伸びている企業に投資する投資手法。
成長性や将来性に対する評価が高いことから、PERやPBRは市場平均よりも高い傾向にあります。
膨大なデータを短時間で処理する能力は人より機械の方が高いので、機械が投資戦略を 立案し始めており、人の仕事ではなくなりつつある。
4.長期(3年以上)投資:
⇒ 投資手法:企業価値評価型、エンゲージメント型投資。
ヒト、モノ、カネを企業とのインタビューや対話を通じて評価し、投資する手法。
会計帳簿には反映されていない、人的資本力(経営者、社員のスキル、マーケットバリュー)、無形資産(知的財産権、商標、ブランド力等)を見抜くことに力をいれるので、機械では読み取れず、人が判断する余地が大きい投資手法。
昨年3月に掲載したコラムで使ったグラフです。

この会社は1997年に株式市場にデビューし、2000年には約1500億円の大赤字を記録しました。この赤字の状態は2002年まで続きましたが、上場から7年後の2003年についに黒字に転換したのです。
もし2003年にAIの技術があったとしても、その時点でのこの会社を強く推奨することは難しかったかもしれません。なんと、この銘柄は皆さんもよく知る「Amazon」です。この損益状況から20年後に時価総額200兆円に達するという予測は、ほぼ不可能だったでしょう。
倒産の危機を乗り越えてAppleを再建した故スティーブ・ジョブズ氏や、赤字の中でも市場シェアの獲得に注力したAmazonのジェフ・ベゾス氏。彼らの経営手腕によって引き起こされた急激な成長は、機械が予測することは不可能でしたし、今後も、長期予測には人の仕事の領域が多く、機械では代替できない領域であることは間違いありません。
理由としては、人は出会いや偶然、必然が複雑に絡み合って、生活し、仕事をしています。今日、もしくは明日、すごく近い将来にあなたが、誰と出会って、どのような話をするのかは、もしかすると、機械は予測するようになるかもしれません。しかしながら、半年後、1年後を予測するにはパラメーター(=変数)が多すぎて、計算できないでしょう。また、仮に計算結果が出ても、おそらく現実とはかなり違った結果で、あてにならないものになるでしょう。
自分の仕事は10年後もあるだろうか?
科学技術の進化やChatGPTの出現で大きく仕事のあり方が変化する今、ご自身の価値を問い直すきっかけにしてはいかがでしょうか?

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