私の父は1994年に他界しました。父は自動車メーカー、マツダ株式会社のサラリーマンで、管理職となった40代(1980年代)は主に人事部で採用を担当していました。採用は大卒、高卒問わず、サッカー部監督の採用までカバーしたようで、1984年、ハンス・オフト氏をマツダサッカー部監督に招聘した際、就任に立ち会ったことから、1992年、オフト氏が外国人初のサッカー日本代表監督となったときには密かに自慢していました。
学者肌で、物静かな父がいくつか強く主張していたことがあり、その中の一つがリクルートでした。マツダの人事部採用係として、リクルートで付き合いがあるのは当然で、「リクルートは素晴らしい会社だ。」「リクルートほど女性が活躍をしている会社を見たことがない」と、いつも感心していました。また、リクルート事件に対しては、江副氏を完全擁護する意見の持ち主でした。父は佐賀県伊万里市出身で、ほぼ独学で京都大学法学部へ入学した、かなりの変人でした。京都大学で法律を学んだだけあり、戦後の「東京裁判」や「リクルート事件」には法律を学んだ社会人として、自分なりに経緯や情報を整理して、持論を展開していました。
リクルート事件に関しては、「江副氏は自分が稼いだお金を使ったのだから、献金や株の譲渡で有罪にするのは反対」という立場でした。法的根拠が曖昧なまま、メディアが一人の企業人をつるし上げ、江副氏に不利になる材料ばかりを強調し、反江副的な世論を形成し、結果、逮捕に至るプロセスに憤慨していました。
このような記憶があったため、今年1月、「起業の天才!江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男」(東洋経済新報社、大西 康之著、以下“本書”)が発売された時、これは今年一番読みたい本になるなと直感しました。
今年は新型コロナウィルスに関する調べものや、自社開発した医療システムのマーケティング、また毎週投稿するコラムの話題にも事欠かなかったため、本書を紹介する時期が若干遅れてしまいましたが、起業家の端くれとしては、紹介しないわけにはいかない本なので、今週取り上げることにしました。
読者の皆さんの周囲にも、リクルート出身の方がいらっしゃると思いますが、起業の文化がないといわれる日本で、起業文化を根付かせているのが、リクルートであり、リクルート出身者です。リクルートの企業文化は、”社員皆経営者主義”です。自分が企画した事業は自分で立ち上げ、人材を集め、サービスを実行し、顧客を開拓し、売り上げを作り、収益を分配する。この資本主義経済では、すごく当たり前のことを極めてシンプルに実行しているのがリクルートのDNAと言えます。
当然のことながら、リクルート出身者が創業した上場企業は数多い。
恐らく25社くらい上場企業があり、さらに短期間在籍していた株式会社USEN-NEXT HOLDINGSの代表取締役社長CEO、宇野康秀氏あたりまで加えると30社くらいあるのではないかと思いますので、元リクルート起業家の上場企業の一部を掲載します。

上場できる企業は、条件や運も必要なので、極めて狭き門の中、これだけ多くの経営者を輩出していること自体、特筆すべきことです。
私たちを取り巻く社会環境に目を向けますと、高齢化社会の進行は止まることはなく、個人が受給できる年金や社会保障サービスは、加速度的に減少していくことは間違いありません。
しかしながら、リクルートが推奨する「自分で考えて行動すること」、「社員皆経営者主義」を身に付けることは、自分がやりたい仕事をして、自分が欲しいお金を自分で稼げるようになるので、生涯現役で仕事をし、年金が不要な高齢者になり、病院で治療を受けた際も、若年層と同様の負担で医療費を払えるようにもなれるでしょう。
そういった意味では、過去、現在、将来においても計り知れない社会貢献をしている会社と言えます。
リクルートは私がサラリーマンとして勤務した銀行とは全く異質な会社で、実際に働いたことがなく、ぼんやりとしかリクルートのイメージがありませんでした。しかし、本書を読むことにより、亡き父の言葉を思い出すと同時に、自分がその場にいたかのような臨場感のある内容でしたので、皆さんも是非読んでみてください。必ず、心に響くものが見つかります。
参考URL:本書読後感想
https://bookpass.auone.jp/review/?iid=LT000142246001203525&cs=cross_nofloor_author&pos=7
